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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
2.ダテ男は伊達じゃない
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恐らく記憶があった頃の彼はかなり魔物と戦い続けてきたと思われる。

 それが証拠に、契約を交わした時に見せてもらったステイタスはレベル1ながら能力値が軒並みCランクという異常な高さを示していた。ダンジョンで冒険者をしながらも未だにレベル2になれない人と比べれば、雲泥の差と呼んで差支えなかった。

(それに、スキルも気になる……いったいリングアベルの過去に何があったって言うんだ?)

 彼のスキルには、最初にヘスティアが抱いた蓋という印象をそのまま表すかのように『暗黒雲海(ブラックブラインド)』という名前が刻まれていた。
 『暗黒雲海(ブラックブラインド)』――その効果は、「忌まわしき過去を経験とスキル諸共封じ込める」というもの。これがどうやったら解けるのか、そして解いた時にリングアベルがどうなってしまうのか、それは不明だ。だが、自らスキルという形にしてまで封じ込めた「忌まわしき過去」を、本当に彼が取り戻していいのだろうか。そう思ったヘスティアは、思わずそのスキルを見えないように消した。

(ごめんよ、リングアベル。ボクはこれを君に見せる勇気がない)

 これは、背信行為だ。彼の記憶を取り戻す事に助力すると言っておきながら、都合の悪い事実をヘスティアは隠蔽した。
 そうしないと、彼が壊れてしまうような――そんな漠然とした不安に駆られて。
 いっそ心を壊すくらいなら、失ったままでいいから笑っていて欲しい。
 それが、ヘスティアの本音だった。

「時に女神ヘスティア。今日、魔物に槍を投擲したらひとりでに手元に戻ってきたんだが、これは恩恵(ファルナ)の力なのか」
「あ、ええと………いや、そんな力はない筈だ。君にはそんなスキルも発現していないよ」

 リングアベルの質問で我に返ったヘスティアは、しどろもどろながらそう答えた。
 怪しまれただろうか、と顔色をうかがうが、今の彼は自分の思考に没頭して不審には思われなかったらしい。

「となると、やはりこれは噂に聞く『アスタリスク』の加護なのか……?」
「その可能性はボクも高いと思うよ。初期ステータスが異常に高かったのも頷ける」
「アスタリスク………天上の神が地上世界に降り立つより更に過去から人類が握っていたアーティファクトか。確か今はその殆どをクリスタル正教とその隣国エタルニア公国が管理しているんだったな」
「うんうん、勉強熱心で感心だね!そう、アレの力なら恩恵(ファルナ)と同程度の加護を受けることができるから、君の強さも説明がつく。まったく誰だか知らないが凄いものを作り上げたものだよ……」

 アスタリスク。それは神が地上と交友を断っていた空白の期間に急激に普及した「クリスタル正教」に伝わる秘法の輝石だ。これを使うと、輝石に刻まれた特定の戦士のスキル、能力値、加護を継
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