六十一話:デートは楽しくな
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も綺麗に輝いている。
「黒歌……『トマトソースパスタ』は俺にとって大切な料理なんだ」
「……うん」
「初めて兄さんに作った料理で、初めて君が俺に作ってくれた料理だから」
お互いに見つめ合いながら自分の胸の内を明かしていく。
言いたいこと、伝えたいことがどんどん溢れてくる。
「死ぬほど美味しかった……この世界に来て初めて生きていてよかったと思った……あの時、俺は救われたんだ」
黙って俺の話に耳を傾けてくれる黒歌だったが心なしか顔が赤く、せわしなく耳が動いて恥ずかしがっているのが良く分かる。
まあ、真顔でこんなこと言われたら少し恥ずかしいよな……。
でも、全部言わせてもらうよ。
「火傷や切り傷の残る君の手を見て誓ったんだ。
―――この手を守ろうと―――“今”を生きようと」
あの時から俺の運命は決まったんだ。
もし、黒歌の『トマトソースパスタ』を食べていなかったらどうなっていたか分からない。
その位、俺にとっては大切な思い出なんだ。
「その時にようやく気づいたんだ……。君が、俺の―――“生きる意味”だって」
黒歌の頬を優しく撫でながら微笑みかける。
どこかトロンとした目でその笑みに答えてくれる黒歌に優しく口づけをする。
黒歌もそれに応えて優しく壊れ物を扱うように優しく口づけを返してくれる。
今のままでも幸せすぎる程の関係だ。でも、今日俺は今の関係を壊して新しい関係を彼女と一緒に築いていくつもりだ。
その為にこの場所に呼んだんだ。
「月が綺麗ですね……」
不意に黒歌がそんなことを言ってきたので思わず呆けてしまうが、すぐにその意味を理解して笑みを浮かべる。
以前は意味を知らずに言っていたけど調べて見たら『I love you』って意味だったんだな。
それなら、俺も返事を返さないとな。立ち上がって月へと手を伸ばして飛び上がる。
「何してるの?」
「ん、月の石でも取ってみようかと思ってな」
「にゃはは。流石のルドガーでも取れないにゃ」
「いや、そうでもないさ」
俺は飛び上がるのを止めて、ある物を忍ばせた手を黒歌の前に出す。
黒歌は不思議な顔をしたまま首を捻るが取りあえずといった感じで手の平を差し出してくれる。
その手の上に自分の手を重ね合わせて手の中の物を落として優しく黒歌に握らせる。
「開けてもいいぞ」
「それじゃあ―――え?」
掌の中にある物を見て黒歌は目を見開く。
その手の中にある物は月の光を浴びて薄くしく輝くダイヤモンドを装飾した指輪。
つまりは―――婚約指輪だ。
「返事が遅れてごめん。今更かも知れないけど、俺と―――結婚してください」
色々と頭を捻ったけど結局これ以上の
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