六十一話:デートは楽しくな
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は想定していなかったために角度が強くタグに引っかけることが出来た。
「ほら、取ったぞ」
「あ、ありがとうにゃ。でも一つ気になるんだけど……なんでそんなに上手いの?」
「一番の理由は金の消費を防ぐために本気で研究したからな。怪我の功名ってやつさ」
「……そんなのだからエルに『器用貧乏』って言われるのにゃ」
「くぅ……」
久しぶりに聞いた不名誉な称号に情けない声しか出ない。
仕方ないんだ。以前にエルにせがまれて借金を背負っていても断れなかったから少しでも金の消費を抑えるために本気で研究したんだ。
俺だって……今日ぐらいは普通に楽しみたかったよ。でも染みついた習性はそう簡単には消えてくれないんだ。
それと……上手いのには少し恥ずかしい理由もあるんだけどな。
「で、二番目の理由はなんなのにゃ?」
「……………からだ」
「え?」
「こういう事に憧れて練習したからだ……。まあ、エルを除いたら黒歌が初めてだけどな」
少し、目を背けながら消え入りそうな声で答える。恥ずかしくて頬が発火しそうだ。
黒歌はそんな俺の様子にクスクスと笑いながら背伸びをして耳元に口を近づけてくる。
吐息がかかって妙にむず痒い。
「初めてのプレゼントが私ですっごく嬉しいにゃ」
そのままの流れで俺の頬にキスをして照れたように笑う黒歌に思わず見とれてしまうが微笑み返して返事をする。
「俺も初めてが黒歌で嬉しいよ」
「ふふふ。さ、他にも色々と回るにゃ!」
「……そうだな」
楽しい一日はあっという間に過ぎていく。
二人でのカラオケで。
「ルドガーって……もしかして音痴?」
「恥ずかしいことにな……証の歌は歌えるのになんでなんだろうな?」
「でも『S○ng 4 u』はすっごい感情が籠ってて惚れ直したにゃ」
「ああ、何だか感情移入がしやすかったんだ」
二人での買い物で。
「ルドガー、カップは何色がいい―――」
「ピンク。断然ピンクだな」
「……実は私が今着ている下着も―――」
「っ! ピ、ピンクキストは身に着ける方が好きなんだ」
「すっごい食いついてきたけど、なんだかそれだけでこの反応されるのも今までの苦労は何だったのかと思って複雑にゃ……」
夕方までデートをして、その後は家に帰って黒歌手作りの『トマトソースパスタ』を食べた。
これは俺がどうしても食べたかったから無理を言って作ってもらったものだ。
黒歌は自分が作るより外で食べた方が美味しいと言ったけど俺にとっては何よりも大切な味だから、“大切な日になる”今日に食べたいから、作ってもらった。
食事を終えた俺は黒歌を誘って二階のベランダへと向かった。今日も想いが通じ合った日と同じように真ん丸な月がとて
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