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101番目の舶ィ語
第ニ話。夜霞のロッソ・パルデモントゥム
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快犯らしい……のか?
ユーカイするらしく。

「そうか、ちょっと待ってろ」

「電話するの? いいわよ!」

俺は手に持ったDフォンを操作した。
直後。


トゥルルル。トゥルルル。

「あー、もしもし? 繋がったな」

「はぁ……もしもし私よ。今貴方の後ろにいるの」

「うええええええ?? な、なんで帰って来ちゃてんの??」

俺の背後にいる奴を見て仰け反そうになるくらい動揺する赤マント。

「まあ、こういうロアだからな、コイツは」

「こんにちは、『月隠のメリーズドール』です」

「こ、こんにちは」

見てわかるほど、挙動不振になる赤マント。
一之江がそんな隙を見逃すはずがない。

「さっきまで私、普通の格好をしていたでしょう?」

「そ、そういえば」

「つまり、私はまるで本気じゃなかったのです。そして本気の私は、さっきよりも10億倍は強いんですよ」

それはいくらなんでもふかし過ぎだ、一之江。
誰もそんな嘘には引っかかたり……。

「じゅ、10億倍も??」

引っかかってるよ??
赤マントには通じていた。
露骨にビビっている。

「さあ、そのドリルをストレートにしてあげましょうか……」

「ひぃっ! こ、今回は引き分けって報告しておいてあげる! それじゃね!」

赤マントはそう叫ぶと、自分の後ろにある空間にダイブした。
何もない場所に水面のような波紋が広がって、そこにトプンと沈み込むかのようにいなくなってしまった。

「……騒がしい奴だったな……」

「あの逃げ方をされると、私の声も届きませんね。まあ、引き分けなのでしょう」

「俺の時みたいに電話をかけて追い詰めるってのは?」

「今私を呼んだのは貴方でしょうに」

「あー、そういう決まりもあるのか」

つまり、現状だと『月隠のメリーズドールの被害者役』は俺ということになってるのか。
物語的になぞらないと能力は発動できないんだな?
「意外と制限が多いな、ロア同士のバトルは」

「ええ。今回は強敵がアホの子だったので楽勝でしたがなんか気になることを抜かしてましたね、あの子」

「ああ、そういえば」

『引き分けって報告しておいてあげる!』

「あれはつまり……」

「彼女は彼女で、私みたいなものなのかもしれませんね」

「一之江みたいなもの?」

「ええ、ですから」

次の言葉を呟くまでに少しの間を置いて。

「誰かの物語、ということです」

一之江はそう告げた。
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