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猫の憂鬱
第4章
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「バイクで来たんですよ。」
「へえ!御前もバイク乗るのか!車種は?なあなあ車種は?」
そんな趣味な話はええからはよ話し!と全員思った。
「いや、先生ぇの、強奪したんですよ…、偶々居てて…、借りますわ、ゆうて乗って来てしもた…」
「宗のバイク…、大型転がして来たのか!?無免じゃないな…?確認だが…」
「ちゃんと大型持ってますよ。やなかったら借りませんわ。扱い判らんのに…」
今だけコタな、を素でする八雲に、全員口が挟めない。此の間加納はずっと、話す八雲に首やら顎やら背中やら撫でられている。加納が、八雲君八雲君と至福そうなのが気に食わないが、なんだか面白い。
「そっち、どんだけ進んだんです?」
「タキガワコウジがタキガワセイジだった、って所迄。」
「お、進んでた。まあ、せやから課長はんが確認せぇ言うたんやろけどな。」
「八雲、話せ。」
「はい。」
立ち上がった八雲に釣られ加納も立ち、何事も無かったように席に着いた。横目で見た木島は、馨ちゃん、馨ちゃんほれ、と腕を伸ばしたが、瞬間引っ叩かれた。
加納馨、直ぐに手が出る性格である。
「此れ、博士が言うたんよ。やから、感謝するなら博士にしてな。」
「よしよし、もう一台セグウェイ買ってやろう。」
「そんな二台も要らん、邪魔や。」
自分でパイプ椅子を出した八雲は課長の横に座り、煙草を取り出した。
「商業のタキガワコウジと同人のタキガワコウジ、此れ、別人よ。」
「ほう。」
「わいはずっと、青山涼子がタキガワコウジの文字を真似てる、て錯覚してた。でも、逆、逆やった。商業誌を出した人物が、同人誌の方を真似てた。…先入観やな。先に出とる方が本物やと、錯覚してた。此れは、わらびにも当て嵌る。本郷はんが持った先入観、青山涼子は猫好き、だからわらびは青山涼子の猫、てな。アレだけ猫好きが公表されとるんや、そら猫居てたら、猫好きの猫やと思うわな。」
「同人誌は?誰が描いてる。」
「青山涼子や。活動開始時期が重なる、日本に帰国した時と。」
「商業誌は、タキガワ本人…、間違いないな?」
「うん、間違いないな。やから微妙に文字が違うのな。最大の難関、利き手。此れはタキガワの癖にある。彼奴は、両利きや。然も、左右対称の。」
木島がちらりと八雲を見、課長は、ふーん、と背凭れに深く座った。
「両利き、な。」
「俺も両利きだよ。」
云ったのは木島だった。
「そうなん!?」
「嗚呼、木島は両利きだ。右でペンを持って、左手で箸を持つ。だから、食事してるのだけ見ると、左利きなんだ、って思うぞ。右で箸が持てないんだ。」
「タキガワは、木島はん以上の使い手や。木島はん、ぎゃっこで文字書ける?」
「左で文字は書けない。」
「タキガワ、本来の利き手が何方かは判らへんけど、両方で文字が書ける。本人見る
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