序章 Twin Bell
1.鐘を鳴らす男、来たる
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の人が身に着けるようなふかふかの襟元をした褪せた青色の服を身に着け、これまた色あせて白に近いアッシュブロンドの髪を揺らしながら、手元にある黒塗りの手帳を確認している。突き出た先端がうねった独特の髪形がよく目に付く。
腰には黒い柄の剣と簡素な槍を抱えており、冒険者のようにも見えた。
青年は困ったように後ろ頭を掻いて呟く。
「この時間に居ないとなると、知り合いの家に泊めてもらっているか、はたまたバイトが長引いているのか?止むを得ん……明日の朝に出直すか。それに、『ファミリアへ入れてもらうよう頼むのは』急ぎでもない。改めて考えると一人暮らしの麗しき女性の家へ夜に訊ねるなど不躾だしな……」
(え?)
今、青年は何と言った?
『ファミリアへ入れてもらうよう頼む』?この、一人たりとも冒険者のファミリアがいないボクの所に、わざわざ?……その意味を理解したヘスティアは、反射的に青年に声をかけた。この町に来て以来初めてのファミリア希望者、ここでみすみす逃すわけにはいかない!
「ちょっと待った!君、ヘスティア・ファミリアに入りたいのかい!?」
「むっ!?その艶やかな黒髪に清涼感のある白い衣、それに体躯に似合わない豊満なバスト……!確かに日記の通り……いや、それよりも麗しい!質問に質問で返す形になって申し訳ないが、君がこの教会に住まう女神ヘスティアか!?」
「え……そ、そう!ボクがそのヘスティアだよ!」
出会うなりこちらの容姿を褒め称えながらもすぐさま名前を確認してきた青年に、ヘスティアは驚きつつも頷いた。今までそれなりにこの町にいたが、初対面でこんな風に口説くような言葉を贈ってきたヒューマンは初めてで、少したじたじになった。
しかもこの青年、正面から見据えてみれば思った以上に美男子である。きめの細かい白い肌にくっきり浮かぶ目や鼻は整っており、その瞳はきらきらと輝いているから余計に照れくさくなる。
返答を聞いた青年は、満足そうに頷いた。
「そうか、それは良かった!やはり日記の記述は正しかったらしい!つまり、このファミリアに俺の運命の人が……!して、蓮の花のように可憐な女神ヘスティアよ!是非、この迷える放浪者をファミリアへ加えてほしい!この通りだ!!」
「お、おお!?」
一人興奮している青年は、うやうやしく礼をしつつまるで姫君を扱うようにそっとヘスティアの手を取った。決してこちらを褒め称えることを止めないその態度に、名指しでの情熱的なアプローチ。思わず顔がかぁっと暖かな熱を帯びるのを感じる。
ヘスティアは突然すぎる事態に戸惑うやら驚くやら照れるやら、色んな感情がごちゃまぜになって混乱していたが、それ以上に嬉しさの感情を隠しきれなかった。これほどストレートに好意をぶつけられるのは、神として長き時を過
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