第五十四話 山師の館その十二
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「私も伯爵だしね」
「ははは、いい呼び名だね」
カリオストロ伯爵の声も笑って応えた。
「ではその様にね」
「うむ、それではね」
「さて、話を戻すが」
教授の声がここで話題を戻してきた。
「私は卿が好きではない」
「私もだよ」
「そう、私達はお互い嫌い合っている、その相手をだ」
「ここに呼ぶことはない」
「そうなのだがね」
「無理に来させてもらったよ」
伯爵は笑って教授に返した。
「この娘達の付き添いでね」
「やれやれだね」
「さて、卿の幻術だが」
「ここで破るというんだね」
「そうさせてもらうがいいかね」
「それはさせないよ」
教授は伯爵が自分の術を破ろうとしてきたところでだ、自分からだった。
姿を見せた、黒のフロックコートにダークブラウンのズボン、ブラウンの上着と白のブラウスに黒の皮の靴を身に着けている中肉中背の男だ。
年齢は初老位だ、髪と目は黒く髪の毛はオールバックにしている。
顔立ちは剽軽な感じだ、だが。
その目は抜け目なく光っている、その彼を見てだ。
薊はその目を自然にさせてだ、こう言った。
「あんたやっぱり詐欺師だな」
「ほう、わかったのかね」
「目を見たらわかるさ」
彼のその抜け目のなさそうなその目をというのだ。
「そこでな」
「人は目を見る、か」
「そうだよ」
まさにそこからというのだ。
「それでわかったよ」
「若いがわかっているね」
「そうさ、それであたし達をだよな」
「私は君達人造人間はね」
つまり薊達はというと。
「人間とは思っていないのだよ」
「だからか」
「そう、倒してもね」
「何とも思わないっていうのか」
「人間とは何か」
教授の考えはというと。
「それはね」
「何だっていうんだよ」
「人間の腹から生まれた者がね」
そうした存在こそがというのだ。
「人間なのだよ」
「だからか」
「君達は人間ではない」
教授はその薊達に対して断言した。
「そう考えていてね、そして」
「私には常に対抗意識を抱いているからね」
今度は伯爵に声をかけてだ、伯爵も応えた。
「卿の怪人を仕掛けたんだったね」
「そうだよ」
教授は悪戯っぽい声で伯爵に答えた。
「卿が察している通りね」
「やはりそうだね」
「私は卿に優っている」
教授は伯爵を見つつ言った。
「全ての分野において」
「私もそう思っているよ」
伯爵もこう返す。
「卿には勝っているよ」
「お互いにそう思っている、しかし」
「勝っているのは卿だというのだね」
「そうだよ」
教授は笑いつつもだ、伯爵に自信を見せた。
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