第五十四話 山師の館その八
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「私達はそれでも」
「諦めないことだよ」
「最後の最後ですし」
「ここで終わらせるんだ、いいね」
「はい」
伯爵にだ、菖蒲は確かな声で答えた。
「そうさせてもらいます」
「その為にここまで来たんだから」
「最後の最後で諦めたら」
「それまでのことが水泡に帰すからね」
「それだけに」
「行こう」
伯爵は声で少女達の背中を押した、そしてだった。
一行は舞踏の間を見回してからだった、まずは階段を昇った。ここでは黒蘭がこう提案したからである。
「上から下にね」
「探していってか」
「そう、それから一階に戻って」
舞踏の間にある今少女達がいる場所にというのだ。
「そうして調べていけばね」
探す時間が短く済むか」
「そう、だからね」
「そういうことか、じゃあな」
「それで行きましょう」
「わかったぜ」
薊が頷いてだ、他の少女達も同意して。
一行はまずは階段で三階まで向かった、そしてだった。
三階を手分けして探した、三階は多くの様々な部屋があり見事なものであったが誰もいなかった。そして二階も探したが。
二階も同じだった、そして一階も。
やはり誰もいないし何もなかった、豪華な美術品と装飾、それに書等があるだけだった。その他にはだった。
何もなかった、だがここでだった。
少女達が一階の最後の部屋である書斎を調べて出ようとした時にだ、伯爵が彼女達に静かに言った。
「ここだよ」
「こことは」
「うん、幻術を使ってはいないけれど」
それでもとだ、菊に答えた。
「それでもね」
「この書斎にですか」
「謎があるね」
「まさか」
「君の家は忍者であることを使った探偵だったね」
「はい」「それならわかるね」
こう菊に言うのだった。
「この書斎の秘密というと」
「隠し扉か何かですか」
「何しろカリオストロ伯爵は詐欺師だからね」
それ故にというのだ。
「追われることも多いから」
「逃げ道とかもですね」
「そう、用意しているからね」
伯爵は菫にも話した。
「どの屋敷にも」
「ではこの書斎ね」
「上手く隠しているね、普通はわからないよ」
伯爵は書斎の中を悪戯っぽく笑いながら目だけで見回していた。そうしつつ言うのだった。
「付き合いの長い私でないとね」
「ではこの書斎の中に」
「秘密があるよ」
伯爵はまた菫に答えた。
「そう、ここにね」
「!?」
伯爵は少女達の前でだった、自分の足元を。
その靴でとんと叩いた、すると。
その床の部分がシャッターの様に開いてだ、一メートル四方の空間の下に。
階段があった、桜はその階段を見て言った。
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