第五十四話 山師の館その四
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「あそこの中にか」
「カリオストロ伯爵がいるのだよ」
「そうだよな」
「さて、ここまでは来られたけれど」
「あの伯爵さん幻術使うんだよな」
「そうだよ」
伯爵もそのことを認めた。
「彼がそれが得意でね」
「じゃあ今見ているこのお屋敷も」
「いや、これはね」
「まやかしじゃないか」
「確かなものだよ」
幻術は使われていないというのだ。
「だから安心していいよ」
「今のところはか」
「そうだよ、ただね」
「これからはか」
「何時使って来るかはわからない」
その幻術をというのだ。
「そこは気をつけていこう」
「じゃあ今からな」
薊はまた棒を出した、そのうえで。
見事な門を見てだった、伯爵に言った。
「いい趣味だよな」
「芸術のセンスには恵まれていてね」
カリオストロ伯爵、彼はとだ。サン=ジェルマン伯爵も答える。
「建築もね」
「こうしてか」
「そう、ただね」
「ただ?」
「この建築はロココ調だけれど」
「十八世紀のフランスのだよな」
「いや、フランスだけではないよ」
所謂ロココ芸術についてだ、伯爵は薊に話した。
「欧州全体でね」
「そのロココはあったのか」
「サン=スーシーもそうだよ」
フリードリヒ大王がポツダムに築かせたものだ、その芸術的価値は非常に高い評価を受け続けている。
「あの宮殿もロココ様式だよ」
「へえ、そうなのか」
「彼はロココやバロックが好きでね」
それでというのだ。
「日本でもね」
「こうした屋敷を建ててか」
「その中に住んでいるんだ」
「それで今は、か」
「そう、彼はあの中にいるよ」
その宮殿を思わせる屋敷の中にというのだ。
「我々がここにいることもね」
「わかってるんだな」
「見ているよ」
ただわかっているだけでなく、というのだ。
「間違いなくね」
「そうか、じゃあ今にもだな」
薊はその目を鋭くさせて言った。
「怪人が出て来るな」
「そうしてくるかもね」
「じゃあ怪人を倒して」
「そしてだね」
「伯爵に会うか」
そのカリオストロ伯爵にというのだ。
「そうしようか」
「では私は」
「錬金術師は戦えないんだったな」
「そうだよ、申し訳ないがね」
「だからそのことはいいさ。ルールがあるからな」
錬金術師の組織のそれがというのだ。
「それは仕方ないさ」
「そう言ってくれるんだね」
「ルールは守らないとな」
薊もこの考えはしっかりとしている、間違ってもならず者ではないのだ。法律やルールを全く理解出来ない愚者でもない。
「やっぱり」
「では私は後ろにいるね」
「そうしてくれよ、出て来た怪人は軒並み倒していくけれどな」
他の少女達もそれぞれの武器を出している、今回も。薊はその棒を
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