第二百十三話 徳川の宴その九
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「非常にな」
「だから今日は連歌会もな」
「上手に出来た」
「そうじゃったな」
「しかし。徳川殿も教養がおありでも」
「どうもな」
やはり三河にいたからだ、家康自身は駿府にいた時も長いがそれでも家臣達の多くは田舎者との代名詞にもなっている三河武士達だ。
それでだ、彼等も言うのだ。
「果たしてな」
「当家の様に出来るか」
「あの様な宴が」
「それは」
「しかも。徳川殿は」
今度言ったのは村井だった。
「とかく贅沢とは縁のない方」
「うむ、あれだけ質素な方は見たことがないわ」
池田勝正が村井に応える。
「とてもな」
「そうであるな」
「とかく何もかもが質素な方じゃ」
「贅沢は民を苦しませると仰りな」
「贅沢をされぬ」
「全くな」
「それはまことによいことじゃ」
池田勝正もそれは認める、実際信長も銭を使う時は使うが民を苦しませることは何があってもしない男だ。
「しかしな」
「それでもじゃな」
「あの質素は」
まさにというのだ。
「とてもな」
「今日の様な宴をするには」
「邪魔になる」
家康のその質素さ自体がというのだ。
「贅沢も時には必要じゃと思うが」
「徳川殿はそうしたお考えではない」
これもまた家康なのだ、天下一の律儀殿と言われているがそれと共に質素さもまた知られているのである。
だからだ、こう言うのだ。
「だから明日の宴は」
「贅沢な宴とはな」
「全く思えぬ」
「さて、どうしたものか」
「わからぬな」
「全くじゃ」
こう言い合う、そして。
蒲生もだ、こんなことを言った。
「しかし徳川殿は生真面目な方」
「うむ、そのことも凄い方じゃ」
柴田は蒲生のその言葉にも頷いた。
「とかくふざけたことはなされぬ」
「冗談はお好きですが」
「生真面目であることは確か」
「ですから明日の宴もです」
「全力でじゃな」
「まさに徳川家のそれで」
「向かわれるな」
「そして我等も迎えてくれます」
まさにそうしてというのだ。
「間違いなく」
「それは確実じゃな」
「ですからそれがしが考えますに」
明日の徳川家の宴はというのだ。
「質素ながらも」
「見事な、か」
「はい」
そうしたものをだというのだ。
「期待出来るかと」
「ふむ、質素であるが」
「確かな」
「それは楽しみじゃのう」
柴田も乗り気になっていた。
「徳川殿らしい宴ならな」
「それもまた、ですな」
「楽しみじゃ、あの方も天下の御仁じゃ」
柴田は家康をこうも評した。
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