2部分:第二章
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第二章
「それは」
「不得手か」
「どうも」
「まあな。いざとなれば逃げるしかない」
氏真は暗い顔になり少し俯いた竹千代に述べる。
「だから馬と水練は欠かさずでじゃ」
「剣はですか」
「弓と槍の次じゃのう」
彼の父義元は海道一の弓取りと呼ばれている。それだけ弓が重要視されているということである。まずは弓なのである。
だが、だ。氏真はここで竹千代に言った。
「しかし剣もじゃ」
「身に着けねばなりませんか」
「そう思うがのう」
「それはわかっているのですが」
「麿は剣は得意じゃ」
実はだ。氏真は剣にも秀でているのだ。公家の芸だけに通じている訳ではないのだ。
「御主も身に着けねばのう」
「もむのふとしてですね」
「そうじゃ。まあ暗い話はこれ位にしてじゃ」
氏真はここまで言ってだ。
表情をすぐに明るくさせてだ。そのうえでだ。
周りの者にだ。こう告げたのであった。
「筆と札をもう一つ持って来てくれ」
「もう一つですか」
「墨があると尚よい」
これを言うのも忘れなかった。そしてだ。
再び竹千代に顔を向けてだ。彼にも告げたのだった。
「ほれ、御主もじゃ」
「和歌をですか」
「詠んでみるか?」
「よいのですか?それがしは」
「よい、上手だの下手だのいうよりも」
「それよりもですか」
「そうじゃ。まずは詠むことじゃ」
それが大事だというのだ。
「まずは歌を知ることじゃ」
「それが和歌ですか」
「何もせずしては何もはじまらんからのう」
氏真は笑って竹千代に話す。
「麿も最初は和歌も蹴鞠も全く駄目じゃった」
「蹴鞠もですか」
「そうじゃ、蹴鞠もじゃ」
実は氏真は和歌よりも蹴鞠で評価が高いのだ。それはまさに妙技と言っていい程でありだ。それを見て惚れ惚れする者も多い。
その蹴鞠にしてもだというのだ。彼は。
「それも最初は全くじゃった」
「そうだったのですか」
「うむ、だからじゃ」
どうするかというのだ。
「やってみるがよい」
「さすれば」
「和歌はよい」
和歌を愛する者としての言葉に他ならない。
「万葉集もそうじゃが誰もが詠むべきものなのじゃ」
「万葉集ですか」
「あれはよいのう。帝も詠まれていれば防人も民草も詠んでおる
「帝だけでなく民草までもが」
「それがよい。だから御主もじゃ」
和歌をだ。詠むべきだと告げて。
それでだった。竹千代は筆と札を与えられだ。
和歌も詠んだ。駿河にいる彼はこうした人質だった。
その人質にだ。雪斎はだ。
熱心に教えていた。今は部屋の中で学問を教えていた。
論語を開きだ。向かい合って教えている。その中でだ。
彼はだ。こう竹千代に言うのだった。
「熱心に読んでおるな」
「でしょう
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