巻ノ一 戦乱の中でその七
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「見付け次第」
「うむ、民を苦しめる賊はな」
「退治しなければなりませんな」
「その通りじゃ、それもまたもむのふの務めじゃ」
「そのうえで武芸も励んできます」
賊を倒すことを兼ねてというのだ、このことも誓ってだった。
幸村は一人上田城を後にした、その幸村を見送ってからだった。
家臣達は昌幸と信之にだ、こう言った。
「あの、殿」
「幸村様お一人で大丈夫でしょうか」
「確かに幸村様の刀、そして槍は相当なものです」
「まだ元服したばかりですが並の武芸者では太刀打ち出来ません」
「忍術も極めておられます」
「その腕はお見事ですが」
「しかし」
それでもというのだ。
「お一人では」
「幾ら何でも」
「無理があるのでは」
「ははは、並の武芸者では太刀打ち出来ぬと言ったではないか」
信之は家臣の一人のその言葉を指摘してだ、笑って返した。
「そうじゃな」
「では」
「はい、確かに」
その家臣もその通りだと答えた。
「言いましたが」
「あ奴は父のわしが言うのも何じゃがまさに天下のもの」
「剣も槍も」
「そして忍術もな。しかも智恵もある」
「だからですか」
「一人でも大丈夫じゃ、そしてじゃ」
昌幸はさらに言った。
「必ず猛者達を集めて戻って来る」
「幾人ものですか」
「あ奴自身さらに大きくなってな」
そうなるというのだ、必ず。
「だから安心せよ。あ奴は大きくなる」
「そうですな、帰って来た時が楽しみです」
信之もだ、微笑んで言った。
「どれだけ大きくなり」
「そしてどういった猛者達を連れて帰って来るかな」
「楽しみですな」
信之も心配してはいなかった、ただ幸村がどれだけ大きくなりそしてどういった猛者を連れて帰って来るのかを楽しみにしているだけだ。
そのうえでだ、幸村の旅立ちを暖かく送ったのだった。
その幸村は旅に出てから飯、そして寝るか用を足す時以外はどんどん進み信濃を南に下っていた。その彼にだ。
旅の途中でたまたま顔を合わせた武芸者にだ、共に飯を食う時に問われた。
「貴殿は何処に行かれる」
「何処と言われましても」
旅の武芸者の格好の幸村は返答に窮した、川で獲った魚を焼いたものを共に食いながら。その腰には二本の刀、横には槍と被る傘がある。そして懐の中には手裏剣や煙玉があるがこういったものは隠している。
「決めておりませぬ」
「腕試しの旅か」
「いえ、人を探しています」
幸村は武芸者に答えた。
「そうしております」
「人とな」
「はい、強い者を探してです」
真田家のことは隠している、この武芸者が誰かはっきりしないからだ。
「その腕を見たいと」
「ふむ。それも武者修行か」
「そう思って頂ければ」
「では人が多いところに行くとよい
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