5部分:第五章
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からか」
「はい、ですから」
だからだと。また言う半蔵だった。
「それはありませぬ」
「左様か。そう言うのだな」
「影から殿、徳川に仇なす者を討つことはです」
「忍の務めの一つだな」
「ですから。お気遣いなく」
「わかった」
半蔵の心はわかっていた。だからこそだった。
家康は頷いた。そしてそのうえでだった。
家康は表情を消してだ。そして言う言葉は。
「では褒美じゃが」
「はい」
「茶器をやろう」
言って早速だった。見事な碗を出してきた。
それを半蔵の前に置いてだ。家康は述べた。
「瀬戸の茶器じゃ」
「あの瀬戸の」
「そうじゃ。これをやろう」
茶器の価値がわかってきた時代である。それでその茶器を彼に渡すというのだ。
「これでよいな」
「有り難き幸せ。それでは」
半蔵は家康の手からその茶器を受け取った。その手は。
震えていた。小刻みに。
そして唇を噛み締めるあまり血が滲んでいた。そうしながら受け取りだ。彼は忍として生きるのだった。
忍 完
2011・7・2
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