4部分:第四章
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第四章
「残念だったな、兄者」
「かわしたか」
「危ないところだった」
声がまた言ってくる。
「わしを倒すのは容易ではないぞ」
「それはわかっている」
「では何故一人で来た?」
「御前の相手はわししか出来ぬ」
だからだと。半蔵は闇の中を駆けながら言う。
「だからだ」
「それでだというのか?」
「下の者を無駄に死なせる趣味もない」
半蔵は自身も動く棟梁なのだ。こうして戦うこともある。
だからだ。今もこうして闘っているというのだ。
それでだ。まただった。
手裏剣を投げる。だがそれも。
「今度も駄目だったな」
「ふむ。しかしだな」
「何だ?どうしたというのだ兄者」
「近かった筈だ」
こうだ。声に対して言うのである。
「今の手裏剣は」
「確かに。先程よりはな」
近かったというのだ。狙いが。
「大体わかってきた」
「ほう。何がだ?」
「貴様の動き、そしてやることがだ」
「わしのか」
「今もだ」
不意にだ。上に跳んだ。すると。
半蔵がそこまでいた場所に手裏剣が来た。相手の手裏剣だ。
それを咄嗟にかわしてだ。木の上から言う彼だった。
「こうしてな」
「今のをかわしたか」
「言ったな。わかってきた」
すぐに木の上から消える。動きが速い。
「幼い頃から変わっていないな」
「ははは、そう思うか」
「わかってきたと言ったな。そういうことだ」
「言うな。ではだ」
声の気配が。急に弱まった。
そして何処かに消えてだ。声だけが聞こえてきた。
それは同じだが気配は感じられない。声だけだった。
「これではどうだ」
「貴様が何処にいるか、か」
「わかるか。動いているか止まっているのかも」
「わかる」
半蔵は相変わらず駆けながら話す。
「では。今度こそだ」
「今度こそ?」
「貴様を倒そう」
今の言葉と共にであった。今度は。
跳んだ。だがただ跳んだだけではなかった。
右手にある大樹に向かいだ。背負う刀を抜いた。
それを前に突き出して構えだ。そしてだった。
大樹に突き刺した。そうしたのである。
手応えがあった。そこに相手がいた。
布が落ちそこからだ。半蔵と同じ黒装束の男が出て来た。覆面をしているのも同じだ。
その彼がだ。半蔵を見て血を吐きながら言うのであった。
「これがわかったということか」
「如何にも」
その通りだとだ。半蔵はその忍者から刀を抜きながら告げた。
「貴様の動き。そして」
「気配もか」
「どれだけ消しても微かに感じられた」
だからこそだ。今こうして刺せたというのだ。
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