第三十八話
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、と俺は首を振る。
「彼女の望みはアリシアの居た幸せだった日々の存続。…例えアリシアが蘇ったとしても叶えられない」
今度の事件で彼女を無事に助け出しせたとしても管理局に追われることとなるだろう。
それは日々怯えながら過ごす、穏やかとは程遠い日常。
彼女の望みが叶えられるとしたら過去の改ざん。
だが、俺たちにそんな力は無い。
「人一人を助けるのは凄く重いよ。彼女のその後の人生全てに責任が取れないならば、何もするべきでは無い」
「そうなのね…」
目の前で抱き合う二人の会話。
それは伝えたかった思いと、伝えられなかった言葉がたくさんあった。
「私、ずっとフェイトの中で夢を見るようにママの事を見てたんだよ」
「そう…」
「ねえ、ママ。私の誕生日プレゼント、何が欲しいって言ったか覚えている?」
「もちろん…覚えている…わ。妹が欲しい…だったわ…ね」
段々意識が朦朧としてきたのか、その言葉はゆっくりとしている。
「うん。だからフェイトの中で眼が覚めた時、ああ、私に妹が出来たんだって思った」
「…そう」
「私はそこに居ないけれど、妹と二人幸せになってくれたらなって、思ったんだよ」
「…うん」
「私はお姉ちゃんで、ずっと母さんと一緒にフェイトを守っていくんだって思ってた」
「…うん」
「私は二人に私の分まで幸せに暮らして欲しかっただけなのに」
「そう…だったのね。アリシアの…願い…いつも私は…気づくのが…遅すぎる」
その言葉を最後に体から力が抜ける。
「ママ…」
我が子を抱きしめたまま息を引き取ったプレシア。
すぅっと人が入れ替わったみたいにアリシアの表情が変わる。
「こんなのってないよ…こんなのって」
頬につたう涙は二人を思ってか。
フェイトはプレシアを床に寝せて起き上がると母さんに駆け寄って力いっぱい抱きついた。
「ああぁっぁぁぁああ」
「…フェイトちゃん」
フェイトを優しく抱き返した母さんの表情も辛そうだった。
ドーーーン
そんな感傷を打ち破るかのように、今まで鳴りを潜めていた庭園の崩壊が始まる。
「まずい!庭園が崩れる」
「脱出しないきゃ」
なのはが少し慌てたように辺りを見渡す。
ピシッ
「危ない!」
今まで持ちこたえていた床に亀裂が入り砕けて虚数空間へと落ちていく。
咄嗟に飛行魔法を使って抱き合っていたフェイトと母さんを抱き上げる。
虚数空間へと落ちていくプレシアとアリシアの躯を遠目に確認したが、手を出せず。
二人の亡骸を見送り俺たちは庭園内から脱出する。
アースラへと戻ってきた俺たちは、次元震が
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