5部分:第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第五章
「飾られるなら少しでも奇麗に飾られたいのじゃ」
「そういうことなのですね」
「そういうことじゃ。奥もおなまも」
二人共だった。ここでは。
「よいぞ。最高の花見じゃ」
「桜ではないですが」
「それでもですか」
「花は桜だけではない」
このことも言ったのだった。家重は。
「その他の花を見るのも花見じゃ」
「左様ですか」
「花見は他の花も」
これはおなまも驚いたことだった。実は彼女も花見と言えば桜だけだと思っていたのだ。しかしそれは違うとて。家重に言われてだ。
それでだ。彼女も気付いたのだ。彼女にも気付かないことがあった。
それを話した家重はだ。さらに話すのだった。
「花見は何時でもどの花でもできる。ではじゃ」
「では、ですか」
「今度は」
「これで終わりではあるまい」
微笑みだ。二人に問うたのだった。
「次は何じゃ」
「はい、それはです」
「もう用意しております」
二人はすぐに答えてだ。そのうえでだった。
家重の前に酒と肴が出される。花を酒と共に楽しむようにとだ。おなまが考えたのである。このこともだ。
そのだ。酒と肴にだった。
菊の白い花があった。酒の中には小さく取られた一弁一弁がありだ。肴の刺身や豆腐の端には一つそのまま置かれている。そうしたものも見てだ。
家重は満足した顔で微笑みだ。こう言ったのだった。
「まことに。最高の馳走じゃな」
そこにも花の心を見てだ。そのうえでの言葉だった。彼はこの後で奥方にもおなまにも労いの言葉と褒美を与えたのだった。そしておなまはだ。
後で奥方にだ。こう言われたのだった。
「そなたのお陰よ」
「有り難きお言葉」
こうだ。奥方に対して畏まって礼をするのだった。
その彼女にだ。奥方はさらに話す。
「そなたの花への造詣、まことに感服したわ」
「いえ、私もまだです」
「までというの?」
「上様は仰いました」
こうだ。奥方に対して言うのだった。
「花見は何時でもどの花でもできると」
「そうだったわね。そうしたことも仰っていたわ」
「私はそのことには気付きませんでした」
このことにだ。深い反省を込めて言うのである。
「まだまだ花への学問が足りませぬ」
「確かに。上様はわかっておられたのね」
奥方もおなまの言葉からこのことに気付いた。そしてだった。
考える顔になりだ。おなまに言った。
「私もよ。それで」
「それでは?」
「最初からそなたを私の傍に置くことは決めていたわ」
それはだ。最初からだというのだ。
しかしそれに加えてだと。奥方は言うのである。
「けれどそれと共にね」
「一体何を」
「お花のことを」
花のこと、今回の話の主役であるそのことをだというのだ。
「一緒に学ん
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ