14話 「その日、運命が動いて」
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発砲時の轟音と威力はカナリアにとってはプラス要素なのだが、大砲そのものと馴染の薄いマーセナリー達にはどうもこれが危険でおっかないものにしか映っていないようだ。
「何でですか……だって敵に近づかずにあれだけ強い魔物を撃破できるんですよ!?威力も保証済みなのに何がそんなに気に入らないって言うんでしょう……?」
もし彼女の質問に答える人物がここにいたとしたら、恐らくはこう答えただろう。
『カナリア自身が危険だから』。
正規軍が使用する大砲をハンドサイズまで小型化した武器を持ち歩き、周囲の被害も考えずに敵がいればすぐさま発射するマーセナリーなど、周囲から見れば危険人物でしかない。
先ほどまで小娘だと内心で侮っていた相手が、実際には自分の10倍以上はあるゴーレムを平然と吹き飛ばせるのだ。自分たちが命がけで相対しなければいけない凶悪な相手を、羽虫でも撃ち落とすようにあしらう得体のしれない存在を隣に置いて、誰が安心など出来ようか。
そんな女は頭が『いかれ』ている。或いは、存在そのものが『いかれ』だ。
ヒトをも容易に粉砕する圧倒的暴力と、それを自覚しないようなあどけない表情。そのミスマッチこそが余計な不安を煽り、カナリアという少女の得体を知れなくしていく。退魔戦役でも、六天尊などの強力な戦力に対して似たような畏怖を覚えた兵士は彼らに近寄りたがらなかった。
大きな実力差があるが故に、ヒトはそれを危険視して遠ざけたがる。
そして、その恐れを正当化するために「あいつは狂っているんだ」と思い込む。
そんな風に自分が思われているなど想像だにしていないカナリアは、段々と憂鬱になっていく。
「あーあ、いっそ一人で戦おっかなぁ。そもそもオジサンが戦い方を教えてくれたのは、『一人になっても生き延びられるように』って事だったし、多分一人でもなんとかなる……よね?」
むくりと体を起こしたカナリアは、それが一番いいのかもしれないと思った。
もとより最初は独りで戦うことなど覚悟の上。そう心を決めてこの屑の集まりに身を投じた。だからパートナーがいないのならばそれでもいい。
不意に、じわりと視界が歪んだ。
それが孤独から来る涙だと気付いたカナリアは、心の弱さを隠すように目元をごしごし擦って顔を上げた。
「……次のパートナー候補で最後にしよう。それで駄目なら諦める……うん、それがいいや」
高望みなどしないし、恵まれなくてもそれでいい。
マーセナリーとして評価されずに落ちこぼれて後ろ指を指されても、それを我慢すればいいだけだ。
テレポットに携行大砲を仕舞い込んだカナリアは、最後のパートナー探しの為に重い足取りで上層へと向かっていった。
その間に出てきた魔物は、素手で黙らせた。
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