14話 「その日、運命が動いて」
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それは、ブラッドとカナリアが出会うきっかけになった昔の物語――
その日、リメインズに何度目ともしれない爆音と絶叫が木霊した。
もうもうと立ち上る煙の中から一人のマーセナリーの男が勢いよく飛び出て、涙ながらに喚く。
「もういい!!もう沢山だ!!お嬢ちゃんに付き合ってたら俺の命が持たねえ!!お願いだからコンビの話は白紙にさせてくれぇぇぇぇッ!!」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待っ――」
「おがあじゃぁぁぁぁぁ〜〜〜ん!!!」
呼び止める間もなく、男は涙や鼻水を撒き散らしながら脱兎の如きスピードで逃げ出していった。
その場にぽつんと取り残されたカナリアはしばしの間遠ざかる背中を呆然と見つめ、やがて「またやってしまった……」と己の失敗を悟り、膝からがっくりと崩れ落ちた。
抱えていた携行大砲の砲塔から立ち上る白煙を切ない眼差しで見つめながら、ごろんと体を地面に投げ出した。
「……もぉぉぉぉ〜〜!!どーして私の携行大砲を見せると皆して逃げ出しちゃうんですかぁッ!?いいじゃないですか魔物は確実に倒せる威力があるし魔法より発動速くて連射できるんだからッ!!」
まるで駄々っ子のようにジタバタともがいたカナリアは、やがて力尽きたようにリメインズの濁った空を見上げて大きなため息をついた。
このリメインズで正式にマーセナリー登録を済ませてからというもの、ずっとこんな事を繰り返している。
最初のパートナー候補は携行大砲を見て玩具扱いしてきたので一発ぶっ放したら腰を抜かして逃げ出した。二人目からは携行大砲の事を説明してからリメインズで実力を見せる事にしたが、どんなに言葉を尽くしても、誰もこの武器の特性や有用性を理解してくれない。
そして、実際に見せると先ほどの男のように尻尾を巻いて逃げ出すか、丁重にお断りされてしまう。
どうやら携行大砲とは母国エディンスコーダ以外では知名度がほぼないらしく、未だに理解が得られない。
「一体何がいけないんだろう?威力はバッチリなのになぁ……」
携行大砲の放たれた先を見つめ、カナリアは納得いかずに首を傾げる。
目線の先には5マトレ近くある『奥の壁ごと弾丸が貫通した』メタルゴーレムが、機能停止したまま佇んでいた。
胸部には巨大な槍で強引に穿たれたような風穴が開き、弾丸の熱で未だに白い煙が上がっている。今にも動き出しそうなそれは、しかし人間でいう脳に当たるコアが粉砕されているために、唯の鉄の塊でしかない。
メタルゴーレムはその名の通り全身が鉄で出来た厄介な自律機械だ。驚異的な硬度と馬鹿力を持ち、このフロア周辺では最もで出くわしたくない対策必須魔物として扱われている。だが、カナリアにとってはただ動きが鈍くて弾を当てやすい的でしかない。
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