第3話 辛辣な雨と降りしきる涙
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でかばった。
「……ただものじゃ、ねぇな」
砂種は体の空気を絞りだすようにフーっと息を吐いた。
「ダイジョーブ体操紅蓮項第23式、ガラムマサラトルネード!」
平目の回転が茶色い粉末をまき散らし、その粉末が火の粉となり、炎の嵐になる。
「グワアァ!」
砂種はその場から離れるので精一杯だった。一応、みんな避難は出来たようだ。
「っ!部室が!」
智野が珍しく叫んだ。
炎の嵐は部室を撫で壁を食い勢いを増していく。
(俺はまた、失うのか……)
砂種が守っていきたいお笑い部、その仲間達の集う、この学校。
(俺はまた、何も出来ないのか……)
「……まだ、出来ることはある」
夜騎士は独り言のように呟いた。
「あるに決まってる!」
そして、吠えた。
「付石……」
砂種は虚ろになりかけた目で夜騎士を見た。
「……僕が囮になる。その内に、みんなでやつを止めてくれ」
「だが、そんなことをしたらお前は無事では済まないぞ?」
一男は夜騎士を一瞥した。
「いざとなったら……」
夜騎士はそう言うと少し思案気な顔をして、まるで春風の元にいるかのように微笑んだ。
「……なんか頼む」
「付石!」
「つべこべ言っている時間は無いぞ!」
夜騎士はそう言うと駆け出した。
「ちょ、待っ……」
「付石 夜騎士はここだああああ!」
夜騎士を見つけた平目は、戦闘態勢に入る。
「ダイジョーブ体操睡蓮項第139式……」
(今だ!)
砂種達はもう片方の出入口から部室に雪崩れ込む。
砂種達は前を向いて走る。見えているのは平目だけ。夜騎士のことは、見ていない。
「ターメリックブレード!」
黄土色の剣が、夜騎士の方向へ向く。
なんだ、
見てるじゃねーか。
砂種は心内で苦笑しながら、不思議と落ち着いていた。
そして、黄土色の剣が夜騎士を貫いたと同時に、
意識が、飛んだ。
思い出した。
僕は
僕は……
「……ハッ!」
彼は目を覚ました。
辺りを見渡しても、地面しか無い。
「そうか……みょうがを食べさせられて、僕は……」
彼はゆっくりと立ち上がり、土を払った。
何も無い地を鋭い眼差しで見つめながら、彼は降ろされたはしごに捕まる。
(……今日の晩ご飯は漢方薬かな)
無理に作った笑顔を乗せて、今日も呑気にマンボウはプカプカ浮かぶ。
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