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白犬と黒猫
6部分:第六章
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藤さんは今どうしておられるかな」 
 沖田はずっとここにいて彼がどうなったのか知らない。近藤勇は既に捕らえられ首を斬られている。心から慕う彼が武士としては屈辱的な最期を遂げたことを知らないのもまた幸いだった。
「戦っておられるかな」
「そうだと思います」
「そうだね。ならいいね」
 沖田は微笑みそれをいいとした。
「あの人も土方さんも」
「戦っておられます」
「最期まで一緒にいられなかったのは残念だけれど」
 それでもだというのだ。
「わしは幸せだった」
「では。その幸せのまま」
「少し寝るよ」
 顔を天井にやって。穏やか顔で言った。
「それじゃあね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。彼は。
 静かに目を閉じてそのうえでだ。眠ったのだった。庭には白犬がいてだ。それで彼を見取ったのだった。
 沖田総司が黒猫を恐れており死の間際に斬ろうとした話は知られている。だが白犬の話は知られていない。しかし彼はその白犬を見て安らかに死んだ。この知られていない事実をここに書き残しておくことにする。沖田総司の安らかな死に顔と共に。


白犬と黒猫   完


                 2011・7・5

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