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或る短かな後日談
後日談の幕開け
四 幕開け
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を。彼女は確かに紡ぎ、その身を、抱き締める彼女の腕に埋めて。

「アリ、ス、アリス……っ」

 助けに来るのが遅かったと。間に合わなかったと。ソロリティの頬、思わず零れ落ちた涙、嗚咽交じりの呼びかけ。更に強く抱きしめ。抱きしめるその腕の中、身を埋めた彼女は。

「――リ、ティ?」

 うわ言とは異なる。はっきりとした、意識の籠った声を上げて。

「アリス……?」
「リティ……リティなんだね。マトも……良かった……助けに来てくれたんだ」

 覗き込めば。その瞳に、狂気は無く。抱きしめた体、呼びかけ、引き戻された意識、正気。取り戻したアリスは、心から。安堵したといった様子で。

「怖かった……怪物も、虫も……体を食べられるのも……勝手に、壊れていくのも……」
「ごめん、ごめんね、もっと、もっと早く……」
「ううん、いいんだ。ありがとう、リティ、マト……よかった……よかった……」

 涙を零しながら、笑みを浮かべるアリスを見て。ソロリティもまた、つられるように、頬を綻ばせ。しかし。
 やっと。取り戻した意識、手の中にあってさえ。彼女の、ソロリティの体は。辺りを飛び交う虫たちが、戦い続けるオートマトンが。ひとりでに傷ついていくのと同じように、裂け、滲み、垂れる赤に彩られつつあって。

「……リティ」
「なに、アリス」
「……一緒に目覚めたのが、リティやマトで良かったよ。本当に、ありがとう」

 アリスは。自身を抱きしめる腕を、優しく離し。屋上、汚れた床に、足を着けて。

「……私だって。アリスやマトと一緒で良かった。だから、こんな……こんな場所から、早く逃げて」
「無理だよ。私はもう、この力を抑えることも出来ない。このまま一緒に居ることは、出来ないよ」
「そんなこと……っ」

 一歩。彼女は。ソロリティの腕を離れ。距離を置いて。

「今までありがとう。本当に、ありがとう。でも……ここで、お別れだよ」
「いや……嫌よ。嫌。そんなことを言わないで。お願い。私たちは大丈夫、大丈夫だから――」
「ごめんね。でも。私も、もう――」


 もう。この世界で生きるのは、無理みたいなの。


 そう。背を向けながら。涙を流しながら。諦めたような笑みで言う、彼女の手を。
 掴もうと。伸ばし、伸ばしても。


 彼女の手へ。届く、前に。


 アリスの体が今までのそれを遥かに越える輝きを以って光を放つ。緑色の輝きは、あまりに強いその光は、最早、白に近いほど。流れ出す力、膨張し肥大した自我次元接触は、強烈なノイズを引き起こして溢れ出し。アリスの目に映る全て。自分の体を含めた全てへとその、不可視の力、圧倒的な力の奔流、極めて暴力的で抗いようの無い破壊の渦を巻き起こして。
 廃病院の屋上、硬い
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