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或る短かな後日談
後日談の幕開け
四 幕開け
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を守ろうと。動き続けているというのに。自分が此処で、座り込んでいるだけなど。彼女には出来ず――否。責任感、罪悪感、それらもまた胸を刺して喚くとは言え。彼女自身が、オートマトンを。アリスを。守りたいとそう願って。

 三人の、大切な時間を。取り戻すことを、欲して。

「ごめんね、一人切りにさせて……私も」

 今行く、と。彼女は、二丁の拳銃を握り締め。

 旋回する蛇蜻蛉。超常の光。赤い粘菌、緑の体液。虫達の残骸、肉片。散らばり彩られる煉獄へと。
 姉妹の元へと、駆け出した。







 踏みつけた緑色の液溜まりが跳ねて彼女のブーツを汚す。流れ落ちた粘菌が黒い体毛、備えた尾に垂れ、獣の足を汚していく。
 しかし。汚れなど、今更。彼女たちの目には映らず。オートマトンの振るう刃は、厚い外骨格に阻まれながらも肉を裂いて。狂気の中に取り残された彼女たちの元へと、ソロリティは歩を進めて。
 アリスは変わらず、何事かうわ言を零しながら溢れ出す光、直に触らず物を破壊する、その力を振りまいていて。空を埋めて旋回する無数のヘビトンボ、小型のそれが徐々に近付きつつあるのを横目に見ながら、ソロリティは。オートマトンが爪を振る様、その周り。自身が狙いを定めるべきは、どの敵なのかを見定めて。

「マト! アリス!」

 オートマトンとアリスへと執拗に迫る二匹のヘビトンボ、四対、五対と、人間の手によって変異を施され、歪なままに繁殖した昆虫兵器。小型のヘビトンボが成した群れを掻き分けるように飛来した三匹を合わせ、この、虫の檻。五匹の異形が人形たちへと牙を向けた。

「リ……ティ、リティ……!」

 ソロリティの投げた声へと、オートマトンは、半ば、呻くように言葉を返し。ソロリティは、彼女の正気がまだ、残っていることに安堵し。
 新たに飛来したそれへと向けてソロリティが引き金を引く。吐き出した弾丸は硬い外骨格に弾かれ。僅かに傷を受けた異形は、尚も彼女等へと迫り。オートマトンが翳した爪もまた、空を切り。見た目の歪さと裏腹に、元の、蜻蛉としての器用さを残したそれは、個々にばらばらの枚数を備えた翅で宙を舞い。距離を置いては迫り、顎を開き、噛み付かんと。三体の人形へと襲い掛かる。
 寸でのところで躱しても。また、羽音響かせ近付いて――そんな、ヘビトンボ達でさえ。未だ言葉を返さないアリスの放つESP、引き起こす知覚混乱、感覚に齎される異常にふらついていて。
 そんな、よろめき、屋上の床、這うように飛んだその虫を。オートマトンが引き裂き、崩し、解体する。ソロリティの放った弾丸が、宙を行く影を撃ち貫く。

 息は荒く。一瞬でも油断したならば、その大顎に噛み砕かれる。鉤爪を突き立てられ、肌を抉られ。絡みつく足、張り付く虫に。頭から食い砕かれる
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