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或る短かな後日談
後日談の幕開け
四 幕開け
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た笑み。泣き出しそうな顔で。ソロリティは眼前の光景。壊れた世界。壊れた姉妹……今も尚。壊れ続ける世界を見て。
 現実感が無い。足は地を離れたように、手は、力を奪われたように。体から心、精神……自我が、切り離されたかのように。全ての感覚が遠のいていって。

「……どう、して……なんで、こうなっちゃったんだろう……」

 ソロリティに、銃を握る気力は最早無く。宙に浮かび破壊を撒き散らすアリス、傍ら、のたうつ無数の触手、暴走するESPによる破壊を受けながらも、アリスを守ろうと、自身を守ろうと。気の触れたように群がるヘビトンボに爪を立て、喚き、泣く、オートマトン。足元に散らばる虫の残骸、それもまた。緑色の光に押しつぶされて崩れていく。

 穏やかな時間は。和やかな時間は。確かにあった筈で。どうしてこうなってしまったのかと、問いかけようとしたところで答えるものなど此処には無く。束の間の平穏を乞い手を伸ばそうとしたところで、その腕は、見境無く振るわれた超常の力に切り裂かれた。

 もう。此処で終いなのだと。短かな生。蘇らされ、弄ばれ。過去の記憶、取り戻すことさえないまま。生きていた頃に紡いだ物語を知ることも無いまま。彼女たちの短かな後日談は、迫り来る大顎、それを以って、幕を――


「リティイイッ!」


 叫ぶ声。反射的に、引き戻された思考、足は。無意識のうちに迫る顎を恐れたのか、飛び退き。耳元、勢い余ったそれが背後へと流れる風圧、羽音が掠めて。
 見れば。ソロリティの目に映るのは。仄かに赤い涙を流し。体、蠢き溢れた肉蛇、鉄の爪。必死の形相で声を張り上げたオートマトンの姿で。

「マ、ト……?」

 オートマトンの心は、既に。壊れ切ったものだと。ソロリティの目には映り。しかし。
 普段の彼女と打って変わり、狂乱し、叫び声を上げ、力任せに、出鱈目に。爪を振るう彼女も、また。壊れかけても尚、僅かに。恐怖、狂気に覆われたその目に、正気の光を残していて。

 呼びかけた声、ソロリティへと向かった虫、避けることなく立ち尽くした彼女が。そのまま壊されることを恐れて。そして、また。自身らへと向かう、アリスへと向かう。飛来する虫へと爪を伸ばし飛び掛っていく彼女の姿を、ソロリティは呆と見つめて。

 彼女(マト)は、まだ。精神が壊れかけても尚。崩壊の寸前へと至っても尚。姉妹が壊されることを恐れて。姉妹を守るために、その、狂気に満ちた乱舞を続けていて。

「マト……アリス……」

 指が動く。遠退いていた感覚が指先に戻り、手が、腰へと伸びていく。膝を着いたままであった足は踏み出され其処に立ち。彼女は吊るされたホルスター、包まれた重み。二丁の無骨な大型拳銃。その、銃把を握り締めて。
 オートマトンは。未だ。アリスを守ろうと、自分
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