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或る短かな後日談
後日談の幕開け
四 幕開け
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 返事は、無くて。只々聞こえ続ける不可思議な音。それは、心の壊れた兵器。ESPの暴走。実際に聞いても、幻聴の類としか思えないこの音は、アリスの放つ超常の力によるものかと。

 ソロリティは。首を振り。髪に指を埋め。思い描いてしまった姿、緑色の光、理解を超えた力、あまりに圧倒的で、暴力的な力を振るう彼女の姿をかき消そうとして。

「違、違う、違う……あの子は、そんな、違う、違う……!」

 聞こえなくなった声、廊下を走り、階段を上り――彼女に近付くにつれて強まる音。そして。

 段差の向こう。差し込む明かり。舞い上がった埃を宙に照らして。赤く垂らされ汚れた床。何か。蠢く音の漏れ出す扉。

 進みたくないと。しかし。進まなければ。彼女は、このまま。


 この場でこのまま、立ち竦み続けるなんて選択肢は。選ぶことなんて、出来るはずも。出来るはずも、なくて。


 嗚咽を零し。体は振るえ。足は、重く、ふらつかせながらも。

 段差の向こう。覗いた景色、その光景を。


 最も見たくなかった姿を。彼女は、見た。








 開けた視界。赤錆びた色の空の下に広がった、くすんだ色をした廃墟の世界。その光は、鮮やか過ぎるほどの緑、眩しすぎるほどの輝き。それは、他の誰でもない。彼女から。アリスの体から放たれていた。
 怪物は粘菌に塗れ、原型を失っても尚体を揺らす怪物と、空。飛来する翼、硬質の体、細い手足。顎を鳴らし、円を描き、赤い空から舞い降りる異形の虫……少女たちの体よりも大きな、ヘビのように長い体を持った蜻蛉達が其処にいて。
 虫たちはアリスを浚った怪物の体に群がり。あれだけ自分たちを苦しめたというのに、もう、沈黙して動くことも無く虫に食われていくだけとなったその姿――浚われたアリスはその怪物に。顎に、噛み砕かれ、引き摺られ。痛みは感じずとも心は潰され、姉妹たちから切り離された恐怖、打ち勝つことも出来ず、既に、意味のある言葉を発すことさえ出来なくなったというのに。虚ろな目から光を溢れさせ、只々ESPによる無差別な破壊を行うだけとなったアリスの体を啄ばもうと、打ち鳴らし迫る虫の大顎を必死に振り払おうと手を振るうオートマトン、彼女もまた狂乱したように。アリスの放つ光、浮き上がる瓦礫、欠片、肉、球を成した粘菌、浮かび上がり砕ける――彼女たち二人もまた。壊れゆきながらも只、只、群がる虫を追い払おうとしていて。

 その光景は。最も見たくなかった姿で。ソロリティは、その場で膝を着き。

『――遅かった、お前たちは。与えられた役割一つ果たせず――アリスの体に埋め込んだ心は既に壊れてしまった』

 声は。彼女の耳に直に届き。けれど、まるで、何処か遠く。彼女の心もまた、壊れてしまったように。

 乾い
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