歩み
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「怒るなって。でも実際、そんな眉間に皺を寄せとくよりも自分から行った方が健康にはいいぞ?ストレスは美容だけじゃなく頭皮の敵でもあるからな。良い男はそこら辺もキッチリ管理しとくのがコツだぞ」
「確かにギルはいつもしかめっ面だもんなぁ。ハルさんの言う通りにもっと気を抜いた方がいいって」
「誰のせいだ。……ったく、むしろこの会話の方が頭皮に来そうですよ」
「おっ!言うようになったじゃないのギル。その調子で隊長さんにも言って来れたらいいのにな」
「ハルさん!!」
「何か、付き添いの私の方が緊張するわね……」
外部居住区の土剥き出しな道を歩きながらホワイトが呟く。
現在、シエルとエリナの協力もあって思っていたよりも早く素材を揃えられたホワイトとジュリウスは当初の目的通りに、当時黒蛛病患者でフライアに収容された人の下へ出向いて回っていた。
「だがやはり、ホワイトに付き添って貰って正解だった。彼等は意識を抑えられて何をされたかの認識すら無かったとはいえ、期待を裏切られた事による怒りや悲しみはまた別。実際に出向いて俺の浅慮がどれ程のものか実感させられた」
ジュリウスは顔には出さないもののその手は固く握りしめられ、彼の心情を表している。
「だからこそ、俺が彼らに出来る事をして返していかなければならない。聖域での農業復興はその第一歩だ」
「工場に頼らない、自然栽培での食糧の生産。まだ私は書類上でしか関わって無いから実感が薄いけど、榊博士の言う通り、聖域が拡大していく限りは間違いなく必要となる技術ではあるわよね」
「それと一つ考えている事があるんだ」
「考え?」
「聖域である程度の動力が確保できたとしても、聖域の環境保護からそれは農業の全てをカバー出来る程でじゃない。その大部分は人が自分の手で行っていかないといけない」
「ええ、だからこそ農業技術を中心に据えた計画ね」
「それには多くの人の手が必要だ。俺はその手を外部居住区の皆に求めたい」
「! ジュリウス、それは……」
「政治的問題も多く簡単じゃあないだろう。だが、農業技術を復興させて維持していくと考えれば、複数人が常にそれを行い伝えていくのが一番だ。人数の制限等は厳しいだろうが、小規模でも聖域に生活圏を置いて自給自足を行って貰えば技術の向上・伝承はより確実になる。それにフェンリルだけじゃなく、全ての人と協力し分け合ってこその希望だと思うんだ」
ジュリウスの声には強い意志が込められ、その眼は遠くの未来を見る眼差しだった。
この計画に参加してから常に自分に何が出来るか、どうすれば上手くいくかを常日頃から考え続けていたのだろう。
ホワイトが知るジュリウスはそういう、根っから真っ
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