本編
第一話
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、先ほどから少し緊張しているような気配があるのには理由があった。
少し前に時間は遡る。
オスマンはトリステイン魔法学校の学院長室で遠見の鏡というマジックアイテムを使用していた。遠見の鏡とは離れた場所の景色を映し出すマジックアイテムであり、普段からオスマンはこの鏡を使い学院の周辺を見張っていた。学院の周囲は見晴しのよい草原でありオークなどの危険な生物も生息していないので安全であるが、世の中何が起こるか分からないので、念のために一度は周囲を見渡しておくのがオスマンの日課であった。
「今日も今日とて平和じゃのお、平和なのも悪くないがこうも平和過ぎると退屈でいかん」
と、一介の学院長としてはあまり誉められたらものではない独り言を呟きながら遠見の鏡を見ていたオスマンだった。
ぐるっと学院周りを一周見回し、二週目に突入したとき、オスマンはその異常に気がついた。一周目では誰もいなかった筈の草原に忽然と少女が立っているのを発見した。草原は見晴らしがよくどちらの方向から人が来たとしても、例えそれがメイジで空から飛んできたとしても、必ずオスマンの遠見の鏡に映る筈であった。しかし、その少女はまるで初めからそこにいたかのように突然そこに立っていたのだ。
それを見たオスマンは真面目な警戒心が半分と好奇心が半分とで少女と接触を図ることにしたのだった。
「先ほども言ったように、長い、とても長い旅から帰ってきたところですわ」
長い時を生きてきて様々な人を見てきたオスマンには、ルイズの瞳に大きな喜びと深い哀愁が見て取れた。旅先での思い出と故郷に帰ってきた喜び、そういった感情が確かに見て取れた。
「ふぉっふぉっふぉ、それはそれはさぞかしお疲れのことでしょう。失礼ですがご実家からお迎えなどは?」
「いえ、私が帰ったことはまだ誰も知らないでしょうからそういったものは…」
「なるほど、それでは学院の馬を御貸しいたしましょう」
「よろしいのですか!?」
ルイズの驚きももっともだった。貴族の子女が一人旅、それも家族に帰省の連絡もしてないとなれば、普通に考えれば怪しさ満点である。さらに言えば、ここで突然に話しかけられたということはもしかしたら自分が『転移』してきたところを見られてしまったかもしれない。突然に草原に現れた貴族を名乗る不審な小娘など、相手がメイジであったならまず杖を突き付けられてもおかしくはなかった。
「…自分でいうのものなんですが、ぶっちゃけ私、怪しさ満点だと思うのですが、本当によろしいのですか?」
「安心なされ、儂は見ての通りそれなりに長い月日をすごしておる、そうすると自然と人を見る目も鍛えられるというものじゃ。それに大貴族の子女に恩を売っておけば学院にとっても悪いこではないじゃろうて」
ふぉっ
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