Episode of Tabasa 臆病者-オリヴァン-part1/変心する嫡子
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を損なわれるとこちらの首が気まぐれで飛びかねない。貴族は平民をさげすみ、平民は貴族を恐れる。このガリアでも例外ではなく、イザベラのいるこのプチ・トロワはまさにその中でも悪い意味の見本である。イザベラの我儘と悪辣さに、ここで働いている者たちは皆振り回され続け、毎日びくびく怯えながらも、生活に必要な給金のために働いている。だったら暇をもらうと適当に言って辞職してしまえばと言われても、そうおいそれと辞めることもできないだろう。イザベラのもとで働くのが嫌だから辞めます、だなんて言えるはずもないのだ。
「ゲーム?前みたいにカードやサイコロ遊びでもしろっての?もうそんなの飽きたわ。気晴らしに狩りに出かけろとか言われても、外になんか出たくないわよ」
退屈だとほざいたのはどこのどいつだ。気を遣ったこっちがまるで馬鹿みたいじゃないか。そうは思うが侍女は口に出さない。
「そもそも、なんで王女である私じゃなくて、あんな人形娘なんかに…魔法の才が…」
いつしか退屈への苛立ちの矛先が、ここにはいないタバサへの八つ当たりになる。自分にすごい魔法が使えたら、あんな奴…。それに魔法の力が優れていたら宮仕えの平民や下級貴族共からも哀れみや同情の視線だってきっと向けられたりはしない。
しかし彼女は勘違いをしている。いかに魔法の才がイザベラにあったとしても、だからといってそれが彼女の人格の評価につながるわけじゃない。それに気づいても考えてさえもいない時点で、彼女はタバサに圧倒的な差をつけられていると言えた。
それに引き換え侍女たちはそれに気づいている。魔法の才以前に、従妹であるタバサにこれまで、自分の一時の気晴らしのためだけにどれだけの嫌がらせを働いてきたことか。王女である身分を盾に、イザベラは侍女や騎士たちに、タバサの服を風魔法でびりびりに破くわ、生卵を投げつけては『笑え笑え!』と命令したり…これまで何度も悪質ないじめに加担させていたのだ。こんな下種な真似をしでかす女より、たとえ魔法の才がタバサに無かったしても、誰もがイザベラなんかよりもタバサこそが王女に相応しいと考えていた。
「…今度父上に何か面白いものを寄越せって頼もうかしら…」
窓から外に広がる青空を眺めながら、イザベラは一人ごちた。その判断が、退屈しのぎ程度では済まされないほどの、一つの騒動を招くことも知らず…。
任務の内容が、まさかガリア首都リュティスの魔法学院の不登校児を学院に登校させるというものだったとは思わなかったキュルケは拍子抜け気味だった。
ともあれ、二人は任務の概要書に記載された依頼人『ド・ロナル家』の屋敷を来訪した。
出迎えてくれた女性は、キュルケと同じ赤い髪でスタイル抜群の美少女メイドだった。しかし露出の少ないメイド服と清楚な物腰が、キュルケとはまた異なる魅力を引き出していた。
屋
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