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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十七話 傀儡師
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備した。発砲が起き警備していた警察が崩れデモ隊が弁務官府に雪崩れ込もうとした。弁務官府を警備していた反乱軍がデモ隊の突入を防ぐために已むを得ず発砲した。その後はデモ隊、警察、反乱軍が三つ巴になっての戦闘になった」
「……」

「三つ巴の戦闘になって周囲にも攻撃が及んだ。シェッツラー子爵が巻き込まれて負傷したが軽傷だ、命に別状はない」
「……」
「発砲は唐突だったそうだ。三人の話によればデモ隊と警察の間でちょっと小競り合いが起きた、そう思った次の瞬間にデモ隊が発砲し恐慌状態になったらしい」
花火どころの騒ぎじゃないな、まるで戦争だ。

「デモ隊が銃火器か。……地球教かな?」
キスリングが頷いた。
「デモ隊に武器が流れていたと見るべきだろう。発砲したのもデモ隊が先だ。多分流したのも発砲したのも地球教徒だろう。シェッツラー子爵は軽傷だったが他にも捲き込まれた民間人が大勢居る。死者も居る様だ」
「……騒ぎを大きくするために故意に無関係の民間人を捲き込んだ可能性も有るな」
「ああ、俺もそう思う」

帝国が出兵するにはそれなりの理由がいる。それは分かっている。しかしそれにしても……。良い仕事をする? 殺すのは惜しい? 何を考えているのだ、この阿呆! あの瞬間だけ死んでれば良かった。阿呆な事を考えずに済んだだろう。
「ルビンスキーの振付だろうな。効果的である事は認めるが吐き気がする。仕事抜きにして奴を殺したくなったよ」
吐き捨てるようなキスリングの口調だった。目の前にルビンスキーが居たら即座に撃ち殺しているに違いない。

「落ち着けよ、ギュンター。失敗は許されないんだ。確実に殺せる、その時を待て」
「ああ、分かっている」
そう、落ち着くんだ。奴を殺したいと思っているのはお前だけじゃない、俺もなんだからな。



帝国暦 489年 12月 10日  オーディン ミュッケンベルガー邸  ユスティーナ・ヴァレンシュタイン



「義父上、お話したい事が有ります。ユスティーナも聞いて欲しい」
夫がそう言ったのは夕食が済みリビングで寛いでいる時だった。私と養父はコーヒー、夫はココアを飲んでいた。何時もと変わらない光景、そして何時もと変わらない穏やかな夫の口調だったけど嫌な予感がした。

「フェザーンで混乱が起きています」
「そのようだな」
養父がコーヒーを一口飲んだ。嫌な予感はますます膨らんだ。フェザーンが混乱している事は皆が知っている。

「近日中に反乱軍を非難する政府発表が有るでしょう。それに応じて軍を起こす事になります。年が明けたら出兵です」
「そうか、御苦労だな」
二人とも淡々としている。どうしてそんな風に話せるのだろう。私は胸が潰れそうだ。夫が私を見た、少し話し辛そうな顔をしている。

「出兵は
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