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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十七話 傀儡師
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」
ほう、閣下とシャフト技術大将は存外に親しいらしい。
司令長官室を退出すると気になった事を問い掛けてみた。
「シャフト技術大将、卿は司令長官と随分と昵懇なのだな。少しも気付かなかった」
「いや、昵懇だなどと、そのような事は有りません」
慌てているな。目の前で頻りに手を振っている。
「しかし大分卿の事を気遣っている様だが」
「……」
シャフト技術大将が困った様な表情をした。余り楽しい話題ではないらしい、変えた方が良いか。
「念のため、もう少し通常航行試験とワープ試験を行いたいと思うが如何かな?」
「そうですな、その方が良いでしょう」
ほっとしたような表情だ。どうやら単純な関係ではないらしい、やれやれだ。
帝国暦 489年 12月 10日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
司令長官室で書類の決裁をしているとTV電話が受信音を鳴らした。番号はキスリングが相手で有る事を示している。受信ボタンを押すとキスリングの顔が映った。緊張している、何か大事が起きたな、少なくとも汚職関係じゃない事は確かだ。
「やあギュンター、何が起きた?」
『フェザーンで暴動が起きた』
ヴァレリーが息を呑んだ。彼女だけじゃない、司令長官室にいる職員皆が息を呑んでこちらを見ていた。
『反乱軍の撤退を求めるデモ隊と警察、反乱軍が三つ巴で衝突した。デモ隊、警察、反乱軍全てに死者が出ている』
「随分激しいな」
『そりゃそうだ、デモ隊には例の連中が参加していたからな』
「やれやれだな」
地球教か、連中はペイワードでは無く彼を支える同盟軍に狙いを付けた。今此処で長老委員会を使ってペイワードを自治領主の座から追うのは背後に地球教有りと同盟に判断されると考えたのだろう、それは危険だと。そうなればフェザーンでも地球教の弾圧が始まりかねない。
だからペイワードでは無く同盟軍に眼を付けた。狙いは悪くない、元々フェザーン人は独立不羈、束縛を嫌う。同盟軍への反感をフェザーン市民に植え付けるのはそれほど難しくない筈だ。そして同盟軍が居なくなればペイワードの始末は容易だ。
ペイワードもそれは理解している、だから同盟軍の撤退を認めるわけがない。しかしそれ自体が地球教の狙いだろう。そうなればペイワードはフェザーン市民の声を無視しているとして非難出来るのだ。長老委員会が動くのはそれからだろうな。
しかしフェザーンで騒乱が起きればその事自体が帝国が介入する口実になるとは考えが及ばなかったようだ。或いは地球教もフェザーンを掌握する事に焦っているのかもしれない。その辺りをルビンスキーが上手く突いて地球教団を動かしたのだろう。良い仕事をするな、ルビンスキー。なかなか派手な花火を打ち上げてくれた。殺すのは惜しい
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