故郷
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のものしか聞き取れなかったのだが……シャロンも決して強い人間ではない事がちゃんと伝わってきた。彼女は孤独に対して人一倍恐怖を抱き、親しい人間が離れる事を恐れている。その有り様は……今の主はやてとあまりに似ていた。
「無力だな、私は。悲劇を生み出す事は出来ても、世界を破壊する程の力があったとしても、私には他者の悲しみを癒す事は出来ない。出来る事があるとすれば、罪を後世に残さないことぐらいか……」
罪は当人が背負うべきもの、本当なら主はやてが背負うべきではないのだ。主は優しいから騎士達を受け入れてくれたが、優し過ぎるが故に傷つきやすく、儚い。巻き込まれただけ……選ばれただけなのに、主はやてが闇の書の罪を背負うのは、どうしても不条理を感じる。兄様の事もそうだ、本来なら私が全ての罪と闇を背負うべきなんだ……。なのに……。
「二人が……皆が救おうとしてくれるから、もう“死”を背負えないじゃないか……」
その呟きは誰にも聞かれる事無く、闇の中に流れていった。
ヴェルザンディ遺跡。アクーナの民にとって先祖代々から伝えられてきた神聖な遺跡で、大破壊から彼らの身を守った“避難所”でもある。彼ら曰く、入り口は常時開いており、避難所として使っている広間までは何事もなく普通に行けるが、最深部に行こうとすると罠や仕掛けが豊富で今まで挑んで帰ってきた者はいないのだとか。
「そういう訳で貴重な遺跡を破壊する訳にもいかず、調べようにも調査団を幾度となく壊滅させてきたトラップの群を前にして、管理局はこれまで手をこまねいていたそうだよ」
「最初は核シェルターかと思ったが、罠だらけと聞くと夢幻街を思い出すな……。しかし管理局の調査団を何度も全滅させてきたとは、中々厄介な仕掛けが用意されているみたいだ」
『というかそんな所にユーノを送った辺り、管理局も結構腹黒いね。でもこういうダンジョンってむしろ攻略のし甲斐があるよね』
「クリアしたら何かレアアイテムや強力な装備でも手に入るのかな?」
「私達も深く潜った事は無いから、罠の内容とか詳しく知らないの。でもアクーナの民は“ヴェルザンディ遺跡は生きている”と先祖から言い伝えられている。生半可な覚悟で挑んだら、遺跡に喰われるから気を付けて」
シャロンの忠告も聞き、覚悟を決めた私達は結晶群の中に築かれた遺跡へと足を踏み入れた。避難所として使われていたという所から、広間までは何事もなく余裕でたどり着けた。そこまでは私達も警戒せず気楽に進めたが、広間の奥の部屋にあった昇降機で地下に降りてからが本番であった。
「周囲の雰囲気が変わった。ここから凶悪なトラップが待ち受けているだろうから、皆気を付けてね? 大声を出したり、怪しいものに触れたりしちゃ駄目
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