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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
13話 闇に沈む森
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 日の昇らない時分の森は、闇が支配する世界だ。日中ならば小鳥などのクリッターが囀りを途切れさせることなく奏でる、街とは趣を異にする騒がしさも、今は静寂が成り代わって無音が立ち込める。光と音の情報が極端に乏しくなった世界。つまりは、情報の選択肢が狭まった環境である。無意味な情報が途絶え、モンスターの足音や声など、本当に必要な情報のみが存在している。隠しダンジョンや隠しクエストに繋がるオブジェクトやアイテムも、こうした時間帯に偶然見つかることがある。多くのプレイヤーは現実の自然と変わらないような目の前の世界に欺かれて、そこにある宝に到達出来ないのである。あるいは、命の危機が付き纏う世界で余所見をする余裕がないとも取れるが、この考察は不毛なので頭から離す。接近する乾いた足音から逃れる為に茂みに隠れ、蜘蛛をやり過ごすと、モンスターが通過した獣道を横切って、目的地であるレアエルフと思しき存在がいた地点へと単身歩を進める。
 第二層の隠しダンジョン以来となる単独行動の理由は、隠密行動によるレアエルフの捜索という手段を勝手ながら選んだためだ。視界の端に表示された《隠れ率(ハイド・レート)》は85パーセント前後。移動時でありながらこの数値を維持できる自身の《隠蔽》スキルに感謝しつつ、同時に、咄嗟とはいえ《索敵》スキルを外してしまったことが酷く悔やまれた。それさえあれば、捜索の面での効率が飛躍的に跳ね上がっていたものの、過ぎたるは猶及ばざるが如し。暗視効果のバフをもたらす《月精の雫》なる目薬状のアイテムを用いて得たモノクロの視界と、人並みの聴力を以て周囲を警戒しつつ、手持ちの情報を精査する。

 森に入ってから現在まで、エルフは全く現れていない。察するに、昨日あのPTを襲っていたエルフの集団は恐らく出現エリアから引っ張ってきたものだろう。エルフ自体の出現率は決して少なくないので、出現するエリアであれば多少の遭遇は考えられる。エルフの分布はベータテスト時代と大きく変わっていないと見て良さそうである。往還階段と主街区、それらを繋ぐ主要路近辺は《通常のエルフ》は出現しないという認識で問題はないはずだ。
 しかし、森エルフを狙撃したエルフ――――だと思われる何者か――――は、恐らく俺達がエルフと交戦した近辺を徘徊していたと考えられる。その根拠として挙げられるのが、昨日の戦闘における狙撃のタイミングだ。あの森エルフの集団は、先の推測の通り森の奥から引っ張られてきた公算が高い。しかし、同様に狙撃手も森の奥から引っ張られてきたというのは少々考えづらいものがある。どうあれ、狙撃手が森エルフを視認した時点でそのイレギュラーな憎悪値の優先順位によって攻撃は既に開始されていたはずだ。加えて、エルフ同士の戦闘ではイメージに似合わない裂帛の気勢が轟く事は広く知られている。だが、あの息を殺した
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