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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
13話 闇に沈む森
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「………ぁ、あ………!?」


 そして、目が合うや否や硬直される。いや、逃亡や攻撃といったリアクションがないところを見ると、もしかしたらクエストか何かへのフラグが――――


「………あ………い、いやぁぁぁぁ! ………いにゃッ!?」


――――フラグ云々は一切関係なかったらしい。しかし、突如として絶叫しつつ逃げだそうとしたエルフだが、寝袋が脚に絡まって顔面から転び、奇天烈な悲鳴をあげる始末だ。何故かこのNPCは動作に合理性が欠けている。本来ならば想定されていなかったであろう《寝袋を使われる》というイレギュラーに対して行動に支障が起きたと考えれば不自然には目を瞑れるかもしれないが、それでも腑に落ちない。ついでに言えば、逃亡しようとしたときに発せられた、変態から逃げようとする女子高生みたいな悲鳴も含めて、腑に落ちない。


「痛っ………ぁ、あれ、攻撃………してこない………ですか?」


 ゆっくりと身体を起こし、恐る恐る俺を見遣ると、なんとエルフは自発的に会話を切り出してきた。NPCであれば強制イベントや客寄せの演出として、シチュエーションによってある程度内容の固定されたセリフを発音することはあれど、モンスターによる動作では到底在り得ない。エルフも多少の台詞がありはするものの、やはり戦闘における演出で好戦的な内容が専らだ。先に確認した通り、このエルフは紛う事なきモンスターだ。色調の薄い赤のカーソルがそれを証明している。NPCのような非敵対的(ノンアクティブ)な行動を取るモンスターなど、この階層においては聞いたこともない。


「あの………えっと………」
「何もしない。大丈夫だ」
「で、ですよね?」


 こちらに敵対する意思がないと判ると、エルフは「よかったぁ………恐い人じゃなかったぁ………」と安堵しつつ胸を撫で下ろす。かなり精巧な感情表現(エモーショナルエフェクト)だ。ここまで来ると、人間が操作していると言われても納得できてしまうが、フルダイブ環境下でプレイヤーが拘束されているという事件性を帯びた状況下で、関係者による演技というのは考えづらい。不確定要素である人間の手が加わるほどに、茅場の計画は破綻のリスクが高まる。それ故に茅場はSAOにおけるエラーチェック及びゲームバランサーを自律的に行う専用システム群に委ねたのだろう。詰まる所、茅場のSAOへ施した仕掛けそのものが、眼前のエルフを人間ではないと否定するのである。
 さて、本題に移るが、プレイヤーを見て逃走を図ろうとした点から察するに、これがアルゴの目的のエルフであることは十中八九確定したとみて良いだろう。そも、通常のモンスターでないのは確固たる事実。どのみちレアエルフであることに間違いはないわけだ。


「………あ、まだ自己紹介………してない
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