第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
13話 闇に沈む森
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が。
………と、茂みを低い体勢で進み、およそ二時間が経過した頃だった。谷の底のような狭い窪地を進んでいると、前方から枝葉を掻き分ける音が近づいてきたため、やむなく樹の陰に身を隠す。左右に迂回出来るほどの幅がない為に、《隠れ率》にものを言わせて突破しようにも、第三層では視覚感知型のモンスターが圧倒的に多いため、至近距離で擦れ違えば看破される可能性が高い。
支援効果として発動している《無音動作》それ自体は《隠密技能継続時間延長》の影響で三時間持続する。しかし、武器を持てば効果は解除され、その上で十五分のCTを課せられるピーキーな仕様を持つ。その事もあって、戦闘を行うという選択肢は避けたい。未だ碌な手掛かりも掴めていない状態であるが、ヒヨリ達に下手な心配を掛けたくなかったこともあり、日の出までには借家に戻っておきたい。残された時間が刻一刻と過ぎてゆくなかで、焦れる内心を抑えつつ様子を窺う。
かなり動きは緩慢だ。俺の隠れた古樹を未だ通り過ぎず、前方から近づいてくる最中のようだ。しかし、どうも歩調が乱れている。リズムが一定じゃない。モンスターは通常、プレイヤーを認識していない状態でフィールドを巡回している場合、その動きは極めて機械的なものだ。一定の速度で順路を回り、一定の地点で周囲の警戒をする。ただし、どの個体がどの順路を受け持つという固定化されたデータではない。モンスターそれぞれに固有の順路が設定され、それが更にパターン化されていない、湧出してから行動を見てみなければ分からない完全なランダムであるという点を除けば、一応はモンスターの動作というものは、それこそ、一定の言語的リアクションを取るタイプのモンスターとて例外なく整理された動作を以てフィールドを行動する。この音の主は、およそSAOのシステムによって供給された存在とは思えない生物的な動きだ。それこそ、プレイヤーである可能性さえ否定できない。視認しようと陰から乗り出す。――――しかし、それはプレイヤーではなかった。
「………………冗談だろ」
思いも寄らない遭遇に、思わず自身の認識を疑ってしまった。
細身に軽鎧を纏い、弓と短剣で武装した女性型のエルフが、ふらつきながら歩いていた。カーソルを合わせてステータスを確認すると、《Dark Elven Shooter》とモンスター名が、満タンのHPゲージが表示される。デバフアイコンも見受けられない。言い方は上手くないかも知れないが、ステータス上では健康に見える。しかし、先刻にエルフはこの近辺に分布していないと断定した矢先の出来事だ。アーチャー自体は決してレアな類ではないのだが、それでも単体で行動していた点や妙に苦しんでいる点は異質と認めるに値する。殊に、装備した弓は昨日の狙撃を想起させるものがある。
「………ッ…
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ