三匹目《初めての友達と行進》
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「え、えっと……落ち着いた? 」
「うん……ありがとう」
隆文は何の因果か、空から舞い降りた金髪の少女と出会った。そして友(ゴッちゃん)の死によりなかなか泣き止むことができないでいた。しかし、そんな隆文を彼女は一生懸命慰めるというよく分からない状況になっている。元はと言えば彼女、フェイト・テスタロッサの所為ではあるのだが、それを一般的な常識でどうこう出来るほど状況は深刻ではない。隆文の位置はいつだって少数派である。例えGが友達でもそれで誰かを責め、償わせる事など出来る事ではないのだ。だがそれでも彼女は隆文の友達を踏んでしまった事を悔いており、ちゃんと謝ってくれているのだ。だから隆文も彼女に対して悪い印象は持っていない。
「その……どうしてって言い方はおかしいかも知れないんだけど……どうしてゴキブリが友達なの? 」
「……それは……信じるかは分からないけど。僕はゴキブリの言葉が分かるんだ」
「ゴキブリの言……葉? 」
「やっぱり信じないよね。誰一人だって、こんな事信じない 」
「う〜ん……私は信じる……かな」
「え? 」
「君が一匹のゴキブリにそこまで涙を流して悲しんでるんだ。だからそれが嘘だとは思わない」
「僕がおかしいとか、幻聴を聞いてるとは……思わないの? 」
「あ! そ、そうだよね……そういう可能性だって……ある筈だよね……で、でも!? 私は君のその優しさを信じたいな? 」
隆文はこの時、初めて人の優しさ、温もりを感じた。母親とかから感じる温もりではない。また別の物だ。隆文は初めてこの話を信じて貰えた。最初に疑う事もなく。だからだろう。隆文は彼女今ある笑顔がとても眩しく見えていた。独りでいた今の隆文に光をくれるようなそんな感覚、隆文はそれを感じているのだ。
またフェイト・テスタロッサ、彼女も隆文に対して不思議な感情を抱いていた。むず痒く、彼に対してもっと知りたいと言う好奇心、興味。他の人間とは違い、彼女は隆文がG達と仲がいいというのを大した問題に感じていない。これまでの人間は隆文にGが纏わりつくというだけで隆文を避け、嫌悪感を抱く物ばかりであった。悪く言えば外見で人を嫌い中身は見ていない。しかし彼女は隆文の力、それに関する事を知っても彼に惹かれているのだ。だからこの出会いは隆文にとっても彼女にとっても運命といってもいいのかもしれない。
「もう行かないと」
「あ! また会える!? えっと……テスタロッサさん? 」
「……会えたら……私も嬉しいかな。『またね』、隆文」
そう言い残し、フェイトは去って行った。隆文は彼女がいなくなってもしばらくその方向を眺めていた。時間はとっくに深夜を回り、母親が心配しているのにも関わらず隆文は固まっている。それ程までに彼女との出会いは隆文にと
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ