三話:誓い
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「わかった。……母さんも同じような理由だったの?」
「そうだ。女性は一般的には男性よりも筋力は低いからな」
父さんの話を聞きながら母さんのナイフを手に取る。少し重いがそれでも子どもの俺でも十分に振れる重さだ。
投擲にも使えそうだ。幻覚でナイフ本体を隠して投げるのも有効だろう。
とにかく、これからはナイフが俺の相棒だ。
精進して一緒に強くなっていこう。そう覚悟を決めていると父さんがどこか試すように俺に声を掛けて来た。
「柊也、お前はなぜ強くなろうとする?」
「二人を守りたいから」
「それはどうしてだ?」
「大切な友達だから」
俺の返事に何かを考え込む様に目を閉じる父さん。
でも、すぐに目を開けて俺のぼさぼさ頭を強めに撫でてくる。
正直言って痛いけど、父さんの手は大きくてゴツゴツしているから仕方ない部分もある。まあ、今はそれよりもどうしていきなり撫でてきたのかが分からないけど。
そんな疑問を感じ取ったのかどうかはわからないけど父さんは撫でるのを止めて口を開いた。
「流石は父さんと母さんの息子だ」
その言葉に思わず目頭が熱くなってしまう。
認められたのが嬉しくて頑張ろうという気持ちがどんどん湧いてくる。
ナイフを握りしめると顔も覚えていないけど母さんの子供だという誇りも生まれてくる。
でも、俺はまだ何も為していないからその誇りは、今はしまっておくことにする。
いつか、胸を張って父さんと母さんの息子だというために。
「明日から、みっちりと鍛えていくからな。覚悟しておけ」
「はい、父さん」
父さんの言葉に必ず、強くなって二人を守り通すのだと俺は改めて覚悟を決めたのだった。
だが、この時の俺は平穏という物は、あっさりと崩れ去るなんて思ってもいなかった。
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