三話:誓い
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静かに部屋の中に入ると布団に伏せたままの琴音さんが出迎えてくれた。やせ細り、弱々しくなった体を無理に起こそうとするのを慌てて止める。
「ケホ…ケホ…ごめんさいね……トーヤ君」
「いえ……それよりも休んでいてください」
「いいのよ……私の体は…コホ…私が一番よく知っているわ」
琴音さんは自分がもう長くないことを悟っているのだろう。
思わず涙が出そうになったので顔を俯けて気づかれないようにする。
琴音さんは俺にとっては第二の母親のような人だ。何年も前から知っている人が死ぬというのは辛い……。
俺ですらこれだけ辛いのだから黒歌と白音はもっと辛いはずだ。
「ねえ……トーヤ君は二人のことは好き?」
唐突に聞かれた問いに困惑しながらも俺は自信を持って答える。
「勿論です。大切な友達です」
そう、黒歌と白音は俺のかけがえのない友達だ。
二人の為なら大抵の苦難は耐えられる。そんな想いを抱けるぐらい大切な存在だ。
琴音さんは俺の回答に嬉しそうに笑い、ありがとうと言ってくれた。
少し、こそばゆい気持ちになって頬をかいていると真剣な目で見つめられたので背筋を伸ばして向き直る。
「コホ…私には一つだけ心残りがあるの……。私が死んだ後…あの子達がどうなるのかが心配……。トーヤ君……あの子達が好きなら―――守ってくれないかしら?」
どこまでも真摯に二人のことを想う琴音さんはやっぱり母親なのだと再認識する。
何の力もない子どもの俺に頼むなんておかしい。
琴音さんもそれを分かっているから俺に選択の余地があるように言ってくれているのだろう。
正直言って誰かを守るなんて難しいことは、理解出来ているとは思えない。
でも……俺の心は既に決まっていた。
「必ず―――何に代えてでも」
守り抜いてみせる。ちっぽけな俺だけど全てを賭けてでも守ろう。
琴音さんが確認の言葉を投げかけてくる。
「本当?」
「神とこの命にかけて誓います」
「そっか……ありがとうね。……安心したわ」
心底安心したような表情を見せる琴音さんに礼をして俺は部屋から出て行いった。
……琴音さんが息を引き取ったのはその次の日だった。
葬儀も終わり、やけに広く感じる家の中で俺達はこれからのことを話し合っていた。
父さんは二人に子供だけだと不便なので俺達の家に来ないかと提案していたけど、それは断られた。二人は母親の思い出が残るこの家でこれからも過ごしていきたいらしい。
父さんもそれ以上は何も言わずに出て行ったのでこの話は終わった。
そして、家には泣きじゃくる白音とそれを抱きしめる黒歌と俺だけが残された。
黒歌も泣き叫びたいんだろうけど、白音が安心して泣けなく
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