天と人を繋ぐモノは
[10/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
時は余計にあんなんなるで。ええ時もあるんやけどへたれる時のが多いやろ」
「ふん、いつも通りで居ればいいモノをかっこつけようとするからだ」
「あー……こうさ、旅立つ男の大きさとか哀愁みたいなの出したかったのになぁ」
明を加えて纏まっていた春蘭達の言葉に、彼はがっくりと肩を落とす。
そうは言いながらも、並んで座る三人は彼に向かって掌を上げた。
「ほい、秋斗。今日からは明も入れてすんでー」
「んにゃ? 何さそれ?」
「意味は後で教えてやる。とりあえずお前も手を上げたらいい」
「……にひ、分かった♪」
「別に毎回しなくてもいいんだけど。今回は命の危険も無いし――」
「うるさい徐晃! はやくしろ!」
「……はいよ」
掌が合わさり鳴る音は、約束の合図。
四つの音は、並ぶ実力と在り方に信頼を込めて。いつも通り任せたぞと意味を込めてのバトンタッチ。
猫っぽく笑う霞と、意味を理解して楽しげな明。秋蘭は彼の瞳を見据えて頷き……
「……徐晃」
最後に春蘭とした後、彼女が普段よりも一層真剣な瞳で見つめてきた。
「……お前のことを信じている奴が此処には居る。だからもう……いや、仕事を遣り切ってこい」
「……? まあ任せとけ。そっちは頼むぞ」
「誰に言ってる? 私は魏武の大剣だぞ? ふん、言われずとも」
「へいへい」
春蘭にしては言いよどんだ様子に一寸不振がった彼は、深く追及すると喧嘩になりそうだからと聞かなかった。
信じてくれているのは知っているし、そんな当たり前のことをわざわざ言わなくても、と思う彼は気付かない。
軍師達と座っていた雛里だけが、春蘭の言葉に驚き少し眉根を寄せる。
語られなかった想いのカタチは、彼の内に居るはずの黒麒麟に向けて。
――劉備よりも、関羽よりも、諸葛亮よりも、張飛よりも、公孫賛よりも、趙雲よりも、お前を信じている華琳様と私達とバカ共が此処には居る。だからもう……絶望などするな。お前を信じてやれる奴が、此処には居るんだ。
主や仲間からの信を得られなかったあの時の彼を、一番憂いていたのは春蘭だった。
黒麒麟へと信を向けず絶望を手渡した居場所に彼が向かうのだ。普段はいがみ合っていても、心配しないはずがなかった。
もやもやと春蘭の心には不安が広がっている。自分では気付いていないというのが問題なのだが、秋蘭や霞、そして華琳はソレを見抜きつつ……それでも何も言わない。
少しだけ、雛里はあの時を思い出して心が軋む。
ギシリ、ギシリと軋む想いは恐怖か、はたまた憎しみか。
「んじゃあ、行って来る」
皆をぐるりと見渡して、雛里には目礼を一つ。彼女の大切を戻せるように、そう願って。
見送るのも仕事だ。彼に縋ってはならない
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ