暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その弐
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 アスナはインディゴの誘いを受けてみることにした。もう一人の対戦相手、スバルとの勝負は確かに得られる情報は多い。しかし命の危険と、情報の難解さを考慮すれば、インディゴと勝負したほうがまだ効率的ではないだろうか。だいだい、平時に理解しきれなかったスバルという存在がたった一度のデュエル程度で解析することが果たして出来るのだろうかという疑問も残る。

 決して臆したわけではない。少なくともアスナはそう思っている。

 インディゴが椅子を揺らしギィギィと歌わせながら、嬉しそうな、驚いたような表情で複数個あるウィンドウのうちの一つを閉じ、立ち上がった。
 立ち上がると分かるが、防具が充実している。とある盾なしの片手剣士とは違い、防御面に優れた分厚いブルーのコートを纏い、その下には鉄製の薄い鎧が見える。更に、鎧の下にチェーンメイルも着込んでいるようだ。しかし三つも同時に≪(どう)≫の装備をセットすることは出来ないので、チェーンメイルと鎧は一体型のものだろう。
 次にアスナは武器を見た。背中に収まっている片手剣とカイトシールド。片手剣のほうはアスナの既知のものだった。
 藍色の片手剣≪ディープワン・ブレード≫は軽く丈夫な事で有名なモンスターのレアドロップだ。魔剣クラスほどではないが三十三層現在では全盛期で、他の剣とは頭一つ抜けた基礎性能を誇る。ダメージも出す必要のある壁、≪タンキーDPS≫などには人気のある武器だ。もっとも、これからの将来性が無いため、あと三層上で旬は終わるだろう。≪ディープワン・ブレード≫も現状かなり強い武器ではあるが、アスナのプレイヤーメイド品である得物と比べれば、総合性で計るとやや劣っている。アスナはほんの僅かながらも勝機を見出した。
 盾のほうは、知らないものだった。そのカイトシールドは暗い青と苔の緑と純白で彩られ、竜紋が施されている。しかし特徴を述べるのならば色でも竜紋でもなく、一つの角だった。盾の形を崩すような角を模したデザインの湾曲した突起があり、その存在が盾にあるべきシンメトリーを奪っていた。

「面白い盾でしょう?」

 インディゴはテーブルの上に腰かけ盾をかざす様に見せつけて、足を揺らしながら聞いてきた。長い振り子は時々地面に擦れ、ブーツの心地いいコツコツという音が辺りに鳴る。重なるようにアスナの声が響いた。

「……デザインだけじゃ分からないけどね」

 相槌(あいづち)に近い探りを入れるものの、藍色の彼女は乗ってはこなかった。返事の代わりに彼女がウィンドウの一つに指を触れると、デュエルの申し込みが届く。
 最も、アスナは自分からデュエルを申し込むことが出来なかったのでそれを待っていたのだった。システム上の問題ではなく、アスナとインディゴの相性によるものだ。
 細かい話になるが、デュエルの申請はま
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