暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その弐
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然と盾と剣を構えている。先の戦闘から既に相手側の切り札がソードスキルでは無いことは分かっている。彼女のスタイルはまず間違いなく≪カウンター≫だ。『ほんの僅かな軌道修正とスピードさえ度外視すれば規定通りの動きをする攻撃を受けるのは容易い。そして敵の硬直に合わせソードスキルを撃つのはもっと容易い』そういう理論だろう。

 だがしかし実際にはそううまくはいかない。自身が使わないソードスキルを覚えることは無用なことだからだ。縦斬りか横斬りか程度なら、構えが上段か中段か下段か腰に据えるかで基本的には一目瞭然。だから例え前線でモンスターが見たこともないソードスキルを発動したところで構えを見れば初撃ならば受けられる。そしてモンスター相手ならばパターンだけ覚えればすべて解決する。モンスター戦において、ひいては攻略のためならば無限数に近いソードスキルを暗記する必要などまったくない。

 だからいざ覚えるとなると立ちはだかるのはその非生産性だ。ソードスキルを暗記しても利益はない。その事実を知ってなお覚えようとなると最早趣味の領域だ。前線にまで来るプレイヤーは逆にそこまで覚えようとするのは少ない。中層ゾーンのほうがソードスキルを網羅できるだろう、という情報屋のよく言う笑い話も、案外嘘ではないのだ。

 どういう経緯かは知らないが、インディゴはその非生産性を乗り越え、そして決闘(デュエル)において活用している。……そして決闘(デュエル)においてのみそれは財産となり剣となる。さきほどアスナの体を二度も斬り裂いたように。

 この二人の目的は人を斬ることなのだろうか? そんなことは無いと思うけど……。

 アスナはそこで一旦思考を止め、決闘に集中した。もし次の剣戟が届かなければ、どちらにせよ私は敗北する。それ以上に考えることがない。だったら全身全霊で最高の一撃を叩き込むだけだ。意識を集中しコンディションを整える。足に力を入れ、武器を握る力を僅かに緩めた。耳を澄ますと、自分の静かな呼吸音しか聞こえない。やるしかない。アスナは決心した。

 静寂の中、ドンッと地を蹴る音が響く。二人の膠着状態を破ったのはアスナだ。姿勢を低くし、地を潜るように走り一気に細剣の間合いまで詰める。最初と違いインディゴの視線はしっかりとアスナを捉えていた。アスナはソードスキルの構えを取る。基本突き上げ技≪スラッシュ≫、それを見たインディゴがほんの僅かに仰け反った。

 ソードスキル≪スラッシュ≫だったら避けられていただろう。だがしかし。

 アスナは五本の指に力を込める。レイピアを手中でくるりと回転させ逆手持ちに切り替え、足の勢いを止めず一気にインディゴの横を駆け抜ける。スンッと澄んだ音が鳴り、ソードスキルの緑色の光がインディゴの首筋を通過点に山なりの弧を描いた。

 奥の手ソー
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