≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その弐
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し、その程度では焼け石に水程度の防御策でしかない。攻撃性の持った壁は、ダメージディーラーと比べるとかなり高い防御力を持つが、フルタンクには防御力で劣るのだ。その防御力は彼らの鉄壁ほどではない。その証拠にHPバーが目に見えて減少している。
しかし三撃目でアスナの優勢は終わる。硬直が解けたのだ。体重移動による代償だろうか、やや不安定な態勢のインディゴは三、四撃目の剣撃を掠りながらも避け、五撃目には盾で防いで見せた。しかし爆発音のような最後の一撃はインディゴにも相当重かったらしく衝撃で後方に押される。アスナも反動で後ろに大きく後退し、二人の距離が大きく開いた。
≪スカイ・テンペスト≫の特徴は五撃目が非常に優秀な点だ。五撃目はそれまでの四撃のどの剣戟よりも倍以上に重く、更に強力な反動で使い手も後退することができる。跳躍してから発動する為、対象に移動されたら空振りする欠点もあるが五連撃すべてヒットないしはガードされれば相当のダメージにはなる。
だが、インディゴは姿勢を崩し大仰な仕草で面白がっている。
「やるぅ! 相性悪いのにここまで粘るなんてやっぱり強いわ」
「……そっちこそ、ね」
インディゴに合わせ軽口を叩いて見せたが、アスナは内心動揺していた。自身の足から漏れる赤いポリゴン片に気付いたからだ。いつの間にか攻撃されていたのだ。アスナの五撃目に合わせて盾を目隠しにした下段突き――ダメージ量から見てソードスキル――を撃ち込んだのだろう。アスナの有効打は≪スカイ・テンペスト≫の最初の二撃と防がれた最後の一撃。それに比べてインディゴは二発のソードスキル。防御力の差も出て、二人の体力差は既に八対六でアスナが負けていた。
――まさかソードスキルにすら対策を持っているなんて、目的が攻略だけじゃありえない、わよね……。
呆れと戸惑いを感じながら、喉奥に引っかかる疑問を飲み込む。そんな事実、ほとんど分かっていたことだ。この二人には攻略とはまた別の目的――ないしは優先事項――あるいは趣味――が存在することぐらいならとうの昔に感じた筈だ。
対人技術も、ソードスキルへの理解度も、恐らくはインディゴにアスナは勝てない。となると――アスナが取るべき手段は――。
そこまで思考を巡らすと、いつの間にか、インディゴが軽い足取りで間合いにまで詰め寄っていた。その距離は最初の間合いよりもずっと短い。細剣のような基本その場で撃ち込むタイプの武器の間合いとしてはやや遠いが、攻撃に移動を組み合わせやすい片手剣ソードスキルのベストな間合いよりかは、幾分か短い。しかしこの距離が恐らくインディゴにとってはベストな間合いと言えるのだろう。証拠というほどではないがインディゴはそれ以上は距離を詰めようともせず、ただ悠
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