暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その弐
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ド重視のソードスキル≪リニアー≫を発動させる。基本技で火力がないとはいえ、他のどの剣技(ソードスキル)よりも最も俊敏値が大きく反映される。唯一有利を取っているスピードという面でアスナはすべてを出しきった。ソードスキルの奏でる耳鳴りのような高い音響が辺りに響く。

 取った! アスナは心の中でそう叫ぶ。

 だがしかし、その剣がインディゴの体にまで届くことは無かった。滑り込んできた盾に阻まれ、細剣は鈍い金属音を鳴らし、弾かれた。
 アスナの驚愕の声よりも早く、インディゴが動き出す。
 細剣を弾いた盾がぐんと前に出て、面でアスナの腹を叩き上げた。ソードスキルでもない、ただの不意打ち。盾そのものにダメージ判定はないが、衝撃はある。二人の筋力差の結果、アスナの体は僅かに浮いた。

「ッ――!」

 防御と攻撃を流れるような動作で連携させる、純粋な人の手による技術――それはソードスキルの打ち合いが基本とされる従来のデュエルとは違うスタイルだった。それ(ゆえ)にアスナは対応に遅れてしまう。
 もろに体当たりを受けてしまったアスナは当然、崩れた体勢になる。アスナは一瞬だけスキル後硬直という言葉を思いついたが、その思考は無駄でしかなかった。ただの純然なる技術に不自然な硬直など存在しない。その技術はソードスキルと錯覚するほどの精密さだったのだ。
 僅かな、しかし絶対として生まれた隙。視界の端で青い片手剣が深く輝いた。

 ――横斬りッ(スラント)!!――

 一瞬の閃き、かつて手に入れた片手剣についての少なくない知識が脳に情報を与える。
 青い片手剣によりアスナの胸部を守るブレストプレートが傷つき、ギリリという鋼の歯ぎしりのような音が大きく響く。傷跡が深々と赤いラインとなりブレストプレートを彩った。不意の一撃。痛快な初撃。本来ならば決定的な一打。しかし。

「くッ……!!」

 双方から漏れた、短い痛切な声。その原因は明確だった。
 赤のラインが裂いているのは胸の防具だけではない。アスナはほぼ反射の域で護拳(ナックルガード)により直撃を防いだ。ダメージこそ直撃と大差ない程度のものではあったが、システム上は真心に当たらなければ、決着の一撃とはならないのだ。
 ソードスキルを打てば、必ず硬直が生まれる。アスナはインディゴが苦笑いを浮かべるのを見えた。

 攻守逆転。アスナは跳躍し構えを取ると呼応するようにレイピアがソードスキルの美しいオレンジ色に光りだす。
 五連撃細剣ソードスキル≪スカイ・テンペスト≫。跳躍し頭上から突き下ろすこの五連撃技は現在アスナの持つ中で最も強力なスキルだ。自然と柄を強く握りしめる。

 一撃! 二撃! なんとインディゴは硬直する中でも体重移動によって僅かに揺れるよう動いて直撃を免れた。だがしか
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