6部分:第六章
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第六章
信長はそれぞれ彼等を己の前に置きだ。怒った顔で言った。
「何を考えておるのじゃ」
「返す言葉はありませぬ」
「わしもです」
前田は真面目な顔で、慶次は飄々として信長に答えた。
「わしはゴロツキ共を成敗したまでです」
「いやあ、飲み過ぎました」
「全く。御主等は以前のただの傾奇者ではないのだぞ」
こうだ。信長は彼等に言うのだった。
「侍共を率いるのだぞ。それで軽率に暴れおって」
「ですから返す言葉はありませぬ」
「言い訳は致しません」
「それで済むか。では聞く」
信長はその怒った顔で二人に問うた。
「御主達はゴロツキ達を他の者に任せたり酒を飲まないとは思わなかったのか」
「ああした者達を放っておいてはなりませぬ」
「勝負の後は酒で奇麗に忘れるべきですから」
二人は信長に毅然と、飄々と答える。
「ですからああしたまでです」
「わしは飲み過ぎました」
「どちらも同じじゃ。将として軽い」
そうだと言う信長だった。
「傾き続けるつもりか」
「そこは殿と同じです」
二人は同時に信長にこう答えた。
「何時までも傾き続けます」
「その所存です」
「言うのう。頑固じゃのう」
信長は彼等の言葉を受けてだ。怒った顔からだ。
不敵な笑みになってだ。こう言ったのだった。
「そこでそう言うか。しかしじゃ」
「はい、それがしは死ぬまで傾きます」
「天下一のふべん者を目指します」
「わしの様にじゃな」
「はい、殿と同じくです」
「傾き続けます」
「言ったな。わしも確かにそうじゃ」
信長自身も傾奇者だ。それも幼い頃よりだ。そうした意味で彼は天下一の傾奇者でもあるのだ。
自分でもその自負がある。その彼が言ったのである。
「しかしわしと同じくか」
「傾きますので」
「これからも」
「わかった。それも道じゃ」
信長はにやりと笑ってだ。二人に述べた。
「御主等はその道を歩いていくがいい」
「有り難きお言葉。それでは」
「そうさせてもらいます」
「しかしじゃ。騒ぎを起こしたのは事実じゃ」
今度は国を治める者としてだ。信長は厳しい顔になり二人に告げた。
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