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パンデミック
第六十八話「見破った能力」
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"コープス性細胞ステルス"

それがアクエリアスのもう一つの能力だった。




原理はサジタリウスの能力とほぼ同じだが、その機能が違う。
アクエリアスの細胞が含まれたウイルス胞子を周囲にばら撒く。
それを吸い込んだ生物は、ほんの僅かだが、脳を侵食される。
侵食された脳は、強制的に誤作動を引き起こされ、視覚が正しく機能しなくなる。
その結果、本来目の前にいるアクエリアスを視認することが出来なくなってしまう。
厄介なのは、感染した生物以外にも効果があるという点だ。
しかし、侵食度合いが僅かなため、集中して凝視すれば見破ることができる。
また、時間をかけると脳内のウイルス胞子に対する抗体ができるため、連続で能力に引っ掛ける
ことが出来ないのも弱点だ。







「お前の能力はもう見破れる。逃げ回ることも隠れて奇襲することも難しいんじゃないか?」

ナイフの切っ先を向け、タガートは相手を挑発する。

「……それで自分を追いつめたつもりか」

アクエリアスの纏う空気が一気に変わった。
人格を切り替えたか。

「お前の能力の一つが使い物にならなくなった。それでも面倒なことに変わりはないが、戦いづらさ
はある程度緩和された。それで十分だ」

「………殺す」

タガートの挑発に静かな怒りを見せるアクエリアス。

両者が駆け出す。

一人はナイフを構えて。
一人は手刀を構えて。

互いの攻撃がぶつかろうとした瞬間……





ドガンッ!!!








「な、なんだ!?」

「……爆発?」


突然聞こえた、とてつもなく大きな爆音。
まるで、巨大な瓦礫が落ちてきたような。何かが凄まじい勢いで爆発したような。
そんな強烈な音が鼓膜を震わせた。

突然の爆音に、タガート隊の兵士たちは混乱している。

「何だったんだ、今のは………」

「おい、あれを見ろ…」

一人の兵士がある方向を指さす。
その先に見えたのは、巨大な土煙。
その方角には旧市街があったはず。

「(本当に瓦礫でも崩れたか?)」

一瞬そう考えたが、すぐにアクエリアスの方に向き直った。
しかし、アクエリアスはタガートの方は全く見ていない。
土煙の方をじっと見ている。

「どうした? 目の前の敵より向こうが気になるか?」

軽く挑発するが、見向きもしない。






「………ヴァルゴが苦戦するとは……仕方ないな」

小さな声でそう呟くと、身体を完全に旧市街の方へ向け、タガートを放置して跳躍した。


「待て!」

止めようとしたが、遅かった。
建物を軽々と飛び越え、あっという間に旧市街の方角に消
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