二話:罪悪感
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もある。それに挑発したのは俺の方だ。黒歌のせいだけじゃない」
「でも…っ。トーヤは目が…っ!」
「大丈夫、これは神様からの試練。俺なら乗り越えられるさ。それに左が見えなくても右がある」
そう言って笑ってみせる柊也に黒歌は泣き止み心の靄は少し晴れる。
しかし、次の瞬間に行われた柊也の何気ない行動により一気にどん底に陥ってしまう。
泣き止んだことにホッとした彼は喉の渇きを覚えて先程、琴音が持ってきた湯呑を手に取ろうとした。
だが、彼の手はその湯呑を押し倒してしまった。まるで―――もっと先にあるはずだと錯覚したかのように。
「しまったな……黒歌、悪いけど雑巾持ってきてくれないか? ……黒歌?」
「っ! う、うん。分かったにゃ」
顔を青ざめさせて固まっている黒歌だったが、すぐに雑巾を取るために部屋から出て行く。
彼女は、ある知識を思い出していた。
人は両目で見ることで立体的に物を認識し、正確な距離を測ることが出来るのだと。
つまり片目では正確な距離を測ることは出来ない―――先程の柊也のように。
しばらくは苦労するが慣れれば日常生活を送るぶんには大丈夫だろう。
だが、彼女にとっては自分の罪をまざまざと見せつけられたようで耐えられなかった。もう、元には戻らない。これから一生、彼は傷を背負い続けていくだろう
いっそ、自分を罵倒して欲しい、傷つけて欲しい。その方が楽になれるだろう。
しかし、彼が自分を悪くいう事は決して無い。
彼女にとってはその事が何よりも―――辛かった。
――罪悪感というものは優しくされるほどに、許されるほどに、積もっていく呪いだ――
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