二話:罪悪感
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の女性により破られた。
「トーヤ君、お父さん喉は乾いていませんか?」
「琴音さん、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
琴音が、話が終わったのを見計らったのかお茶を載せた盆を手に部屋に入って来る。
これ幸いとばかりに二人はお礼を言って琴音を迎え入れる。
軽く咳き込みながら、琴音は二人の前にお茶を置く。そして、正座をして二人に深々と頭を下げる。
「本当にごめんなさい。私があの子にしっかり言い聞かせていなかったばかりに」
「……いえ、これも主が息子に与えた試練なのでしょう。この子は必ずや乗り越えます。ですから、頭を上げてください。寧ろ、危ない所だった息子を助けてくださってありがとうございます」
「それこそ、気になさらないで下さい。私はそれしか出来なかったのですから」
お互いに頭を下げ合う大人の様子を不思議そうな顔をしながら柊也は見つめる。
父の言うようにこれは主が自分に与えた試練なのだろう。
少し生活が不便になるかもしれないが、悲観することは無い。
と、考えている彼の瞳にふすまの隙間からこちらを覗く金色の瞳が映った。
「黒歌…?」
「っ!」
彼が呼びかけると瞳はすぐに消えてしまうが、しばらくすると再び不安げに揺れる瞳を覗かせてくる。
琴音は彼女の様子に少し溜息を吐きながら入って来るように促す。
母親の声に従い入って来た黒歌はいつもの快活さは息をひそめていた。
大人二人は示し合せたかのように部屋から出て行き子供二人だけを残して行く。途中、黒歌がすがるような目で琴音に視線を送ったが、琴音はそれを無視して黒歌の後ろについて来ていた白音を抱きかかえて消えてしまう。
残された柊也と黒歌はしばしの間、無言で目も合わせることなく固まっていた。
もっとも、目を合わせないのは黒歌の方だけなのだが。
一分が一時間にも感じられる沈黙の末に酷く小さな声が遂に沈黙を破る。
「………ぃ。……ごめんなさい。本当にごめんなさい…っ!」
俯き、ただひたすら謝り続ける黒歌の足元にはポツポツと水滴が落ちていた。
彼女は今までに感じたことのない後悔に襲われていた。自分が母親からの言いつけを破ったが故に起きた事故。
自分の身勝手のせいで大切な友達の光を奪った。おまけに原因たる自分は彼に庇われたおかげで無傷だ。
いっそ、自分が傷つけばこんなにも苦しまなくてすんだのにと彼女の幼い心はぐちゃぐちゃになりこうして涙を流してしまうのだった。
だが、それに慌てたのは柊也の方だった。
彼女が泣いているところなど今まで一度も見たことがない上に女性には優しくしろと言われているのだ。
このままにするわけにはいかないと彼は慌てて慰めにかかる。
「止めなかった責任は俺に
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