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とある幻術使いの物語
二話:罪悪感
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のお菓子を持って山に出かける姿に怪しんで追ったことがあるからだ。
 その時は幻術で自身の姿を隠してから追ったので三人には気づかれていない。
 もっとも、彼女達の母親である琴音には気づかれたので姿を現して挨拶はしている。
 妖怪である猫又に思うところがないわけではないが子供らしく笑っている息子の姿を見れば近づくなと言えるはずもなく、黙っていることにしたのである。

「全く……子育てというのは本当に難しいな」

 不器用ながらも愛情深い彼は、ここにはいない妻に語り掛ける様に呟きながら恭弥は仕事に戻るのであった。





 柊也は何故か自分に鋭い視線をむける黒歌と向き合っている状況に困惑していた。
 何か自分が怒らせることをしたのかと首を捻るが思い当たる節は無い。
 いつもなら白音が黒歌の暴走を止めてくれるのだが生憎お昼寝中なのでここにはいない。
 困惑している柊也をよそに黒歌は何やら意味あり気に笑うだけだった。

「えーと……黒歌、何をする気なんだ?」
「ふふふ……今日は生意気なトーヤに仙術(・・)の力を見せてあげるにゃ!」

 これでもかとばかりに仙術という部分を強調しながら告げる黒歌。その顔は何故か活き活きとして輝いていた。
 柊也は黒歌の言葉にそう言えば前にそんなことを言っていたなと思い出す。
 以前に聞いたときは琴音の監視の元でなければ使ってはならないと言っていたが一人で使うという事はマスターしたのだろうかと目線で問いかける。
 しかし、彼の目線は気まずげに逸らされた。黒歌の明らかに挙動不審な仕草に柊也は思わず溜息を吐いてしまう。

「危ないんじゃなかったのか?」
「だ、大丈夫にゃ! 今まで失敗したことなんかないから大丈夫!」
「まあ……それなら大丈夫か」
「そういうこと、それじゃあすぐに私の方が凄いことを証明してあげるにゃ」

 未だに自分を差し置いて柊也が白音に褒められたことが許せないのか対抗意識をあらわにしながら告げる黒歌。
 柊也はそれに対して苦笑するしか出来ないが止めようとはしない。
 周りの子供と比べれば父親の影響からか、少し大人びているが根は子供なのだ。
 珍しい物があるなら見てみたいし、やってはいけないと言われればやりたくなるものだ。それに、自分が頑張った成果を誰かに見て貰いたいという気持ちも強い。
 彼が学校の友達よりも二人と遊ぶのも二人になら自分の幻術を見せられるからである。それ故に黒歌の行動を止めようとはしないのだ。

「それじゃあ、始めるにゃ」

 黒歌の尻尾が一本から二本に増える。
 そして、少し集中するように目を瞑ったかと思うと背後に紫色の魔法陣の様な物が現れる。黒歌は一端、目を開けて柊也にしっかりと見ておけと言わんばかりに目配せをして魔法陣か
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