§66 腐りきった果実の果て
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――――――奴の所在を我に伝えよ。
思念は伝播する。風を伝い海を渡り。一個の生命から複数の生命へ。級数的に増加する。大地の奥深くのバクテリアから、光の届かぬ世界に住む深海魚まで。
――――絶対に逃がしてなるものか
「んー」
黎斗のくるまっていたシーツが、黒いケープに姿を変える。全裸だった体躯は格式高い青の衣装を纏っている。金属鋲の打ち込まれた長靴を履いて、右手には黒い装甲のような仮面。
「直接見たわけじゃないけど、本人から聞いたし」
そういって発動させるのは妖精王の帝冠。アストラル界と現世をつなぐ権能。
「上手くできて良かったよかった」
力任せに現世と繋ぐより、こちらの方が呪力の消費は多くない。今度からこの手法を使わせてもらおうかと内心一人でそう決めて。
「さて、次」
いったん黎斗の姿が元に戻り、それから今度は毛が伸びる。すね毛が濃いとかまつ毛が長いとか、そういうレベルを一瞬で超える。同時に骨格が歪む。体色が黄色人種のそれから変わる。体毛が黒から金へと変わる。容姿が人から別の生命へ変わっていく。瞳が火眼金晴へと変貌する。頭には金の輪がついて、右手に持つのは長い棒。
「へぇ」
ドニが面白そうに黎斗”だった”ものを見る。
「こんくらいでいいかな?」
黎斗は無造作に左腕から毛を引き抜いて、アストラル界との境界に落とす。吹けば飛ぶような軽さの体毛は小猿の姿をとって、門の向こうに消えていく。右腕からも毛を引き抜いて、幽世へ。
「幽世に行ったら、みんなもっかい身外身を。更に分裂して探してね」
「キキッ!」
一際大きい猿に告げれば、「了解したぜ。任せろ旦那」とでもいうかのようなノリの良さで敬礼しそのままゲートの奥へ消える。数匹の猿は「んなこと知ったことか! 俺は現世を満喫するんだ!」とばかりにあさっての方向へてんでばらばらに散っていく。
「……まぁいいけど。迷惑かけないことと探すのだけはちゃんとやってね?」
呆れながらも黎斗が言えば一様に「キキッ!」と了解の意を示す。なんともまぁ調子の良いことだが事件は起こさないだろう。こういう術で術者の意にそぐわないことをする端末は出現しないと信じたい。
「お義兄様、これは……?」
「ん、魚人を三枚に下ろすための下準備……というのは冗談として。逃げた神がどこにいるのかを探すために斥候を放ってみようかと。人海戦術で行けばドニの”剣”が切れる前に見つけられるでしょう」
どうよこの名案、とばかりにドヤ顔をすれば。
「……そんなことをしなくてもお義兄様の破壊光線で海の水を全て蒸発させてしまえばすぐに見つかるのでは? もしくは猿君と戦った時のように、天から星
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