暁 〜小説投稿サイト〜
お目当てができて
3部分:第三章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
じゃ。また行きたい」
 切望する声でだ。周りに言うのだ。
「広東にのう」
「この前行かれたばかりではないですか」
「それでもうですか」
「また行かれたいと仰るのですか」
「その様に」
「まことに美味だ」
 皇帝は広東の味を思い出してだ。無意識のうちにその顔を綻ばさせていた。それは龍顔というにはいささか綻びが過ぎていた。だがそれでもだった。
 皇帝は言うのだった。その広東の味についてだ。
「だからじゃ。またじゃ」
「ですからこの前行かれたばかりです」
「もう少しお待ち下さい」
「御言葉ですが我慢をお願いします」
「料理人にあの地の料理を作らせますので」
 周囲も大変だった。皇帝を止めることは。
 とにかく皇帝は広東の味を楽しみたかった。遠い北京から。
 乾隆帝は無類の美食家だったことで知られている。そして度々広東を巡幸してその料理を楽しんでいた。中国の歴史において名君の一人として名高い彼であるが贅沢を好んだことでも知られている。そしてその中で食に関するこうした話も残っている。面白い話であるのでここに書き残しておく。それ程までに広東の食は美味ということであろう。


お目当てができて   完


                   2012・3・22

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ