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不可能男との約束
終わった話
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ない。

正気ではない、狂っている、と。

だが、真実の彼は───必死なのだ。夢を叶えようと。
子供か、と妖精女王は思う。
大人は夢に対してそんな眩しい物を見る目と姿勢で追わない。
夢に対して現実的に考え、理論的に可能か不可能かを考えて身の程を考える。
そして次に大体の人間が自分には無理であったと夢から視線を逸らす。そしてそれ以外の人間がそれでも、という思いで努力を重ねる。
そしてそこからまた挫折するか成功するか、努力を更に重ねるかに分かれるのだが。
だが、この少年は夢をまるで光輝くモノのような姿勢で追いかけている。

夢とはどうしようもなく尊く、だからこそ追いついて手に入れたい、と

子供か、と再び思う。
妖精女王と言われ、自分でも時たまネタにしている言葉でロマンと使われるが、目の前の少年に比べたら自分が如何に現実的なのかを知る。
ジョンソンはこうも言った。
間違いなく彼が年齢にそぐわない"死"を体験しているのは確かだと。
総長連合に入っている者だ。特別不思議な事ではない───と言いたいが、ジョンソンは恐らくそれを踏まえて(・・・・)こう言ったのだ。
間違いなく自らの意思を持って生き地獄を味わったはずだ、と。
それでもいい。それが自らの意志であってもそれを支える何かがあればいい。地獄を踏破した後に安らぎがあるならばそれは救いだろう。

だがこの少年は……

そんなものを持っていただろうか?
身内の梅組のメンバーは身内過ぎてそんな事を言い出せるような仲には見えない。私達ですらそんな事を軽く言い合えるような仲ではない。
浅間神社代表は恋仲なのかと思えば、何やらジョンソン情報では初デートらしいし何か曖昧な関係らしい。ヘタレか。
熱田神社は仕組み的に彼を敬い、畏怖する側になるはずだ。力にはなれど支えではなくむしろ彼が支えの柱にならなければいけないはずだ。
ならば外からだが……外からには最近まで彼は武蔵総長と一緒で無能の烙印を得ていた。
実際、評判に関しては最近は良くなったらしいがつまりはそれ以前は語るまでもないという事だ。
そして家族は正しく文字通りに後悔(チカラ)になった。
つまり、この十年、彼を支えたのはただ己の意志だけだ。意志のみだけで彼は十年間のフルマラソンを乗り越えてきたのだ。
身内からは期待の念を預けられ、周囲の人間は彼に対し嘲笑や見下しの目線を向け、家族にはただ重みを背負わされた。
武蔵総長は本当の無能だが、だからこそ支える人間がいただろうに。それこそ彼の姉辺りがそうなのだろうと思う。
私ですらそうだ。口では言わないし、能力的な事も含めて支えは間違いなく必要であった。
性格とかそういう問題ではなく、生物として誰かが居なければ、誰かの力がなければ、人間も鬼も妖精も霊体も竜もその他
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