終わった話
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だ最初は本当に気付けなかった。
理由は簡単だ。
もう彼にとって疲労を抱えているのは当たり前の事になったからだ。
自分の性能が落ちている事を前提に動いている。
余りにも当然な事だ。
自分達は知っている。
本人は隠しているつもりではあったのかもしれないが、聞いた通りならば恐らく十年前の我が王との約束の日から副長はずっと疾走していた。
小等部では恐らく肉体と基本を突き詰める地味な基礎鍛錬を武蔵の自動人形や自身の神社で詰め込み、その後、中等部で彼は技術だけではなく経験が必要だと思ったのだ。
そして結果は一年の時は一週間に一回は血まみれでぼろぼろになって帰ってきた。
二年の頃は三日、四日の周期で肉体を砕かれていた。
だが三年の頃には疲労と多少の傷を残して日々を過ごしていた。
どんな相手と経験と積んできたのか。
実に単純な話であった。
武蔵で相当な力を持っていて当時の彼を確実に上回るような相手など大量にいる───例えば総長連合と生徒会と教員、もしくは武蔵に流れてきた実力者だ。
クラスの皆はその事実を知っている。
私の場合は偶然、彼と相対した人間と出会う事が出来たからだ。
そして私はその人に対して他のメンバーが知っているのか分からない質問をした。
勝負の内容はどうだったのか、と。
そしたら
「勝負の内容なら間違いなく自分の勝ちだった」
攻撃力はともかく技や経験、流れ、閃き。
どれも自分が間違いなく勝っていた、と。
だが
「勝ちだったが……全く勝った気がしなかった。否───何をやっても勝てないんじゃないかと錯覚した」
怪物だった、と当時の自分にはまだ理解は追い付いていなかったがかなりの歴戦者だったであろう人は心底恐ろしい者に出会ったと言外に隠そうとして、しかし体が震えてしまったのを自分は見た。
もしかしたら副長が一番怪物染みていた時期は中等部の頃であったのかもしれない、と冗談にもならない事を高等部に入ってからよく考えたものであった。
経験や実力が足りていなかった時こそ一番恐れに満ちていたなんて笑い話にならない。
傍から見たら狂気に近い……いや、もしかしなくても狂気なのかもしれない。
だから本人ももしかしたら先程、己を笑ったのかもしれない。
自分の所業は邪神の理だと。
実に清々しく笑ってそう言っていた。
間違いなく、それが文句があるならかかって来いという意味でも。
何もかもが上に行かれている。
実力だけならミトツダイラとて納得はする。悔しくは感じるが、それに懸けた副長の努力の一端を知っているならば納得は得る。
ただそれ以外の覚悟や執念というものが余りにも遠くに感じて───心が折れそうになる。
自分もそこに行きたいのに。
自分が|そこに《
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